「ゴルフで見つける、私の”特別”」TVアニメ『空色ユーティリティ』が放送中!音響監督・daisuke horitaと音響効果・長谷川卓也、録音調整・鈴木裕幸によるインタビューが公開!

2025/1/23

TVアニメ「空色ユーティリティ」音楽対談 第2回 daisuke horita × 長谷川卓也 × 鈴木裕幸

 

TVアニメ『空色ユーティリティ』音楽インタビュー連載、第2回はアニメにおける音響について。台詞、音楽、そして効果音と、アニメにおける音はどのようにして作られているのか。ゴルフを題材にした『空色ユーティリティ』においては、どこまでこだわり抜かれているのか。今回は音響効果の長谷川卓也(サウンドボックス)、録音調整の鈴木裕幸(デルファイサウンド)、そして音響監督のdaisuke horitaの3人に、意外と知られていないアニメの音響について基礎的なところから『空色ユーティリティ』の醍醐味までを余すことなく語ってもらった。

 

ーー今回は、アニメの音響についてお話をお伺いします。まず、みなさんは『空色ユーティリティ』でどんなお仕事をされているのか、自己紹介をお願いいたします。

 

長谷川卓也 音響効果を担当しています、長谷川です。音響効果というのは、いわゆる台詞と音楽以外の音をつけることです。例えばシーンでセミが鳴いていたらセミの音を入れたり、風が吹いたら風の音、海に行ったら波の音……という環境音、また時にはコミカルな漫画音もつけますし、殴るとか爆発とか人が倒れる音とか、そういう効果音全般を担当しています。

 

鈴木裕幸 僕は効果音以外の音を担当しています。具体的に言えば役者さんの台詞を録ったり、音楽を貼ったりして、それらのボリュームを調整する仕事です。アニメの音の根幹って、台詞にあるんですよね。台詞が聴こえないと何も意味がなくなってしまうので、その根幹部分を収録したり、編集したり加工したりする仕事です。

 

長谷川 アニメにおける音って台詞、音楽、効果音の3つしかないんですよ。効果は僕で残りは鈴木さんという感じになっています。

 

鈴木 でも、台詞は役者さんが喋って、音楽はhoritaさんが作る。なので僕は音のバランスを調整してるという役割ですね。

 

ーーそして前回もご登場いただいたhoritaさんは、劇伴の制作に加えて音響監督もご担当されています。

 

daisuke horita そうですね。今、鈴木さんが調整役とおっしゃったんですけど、鈴木さんも含めての調整役という感じですかね。音周り全体の統括をするのが自分の役割になります。今回のお芝居を制作するにあたってまず鈴木さんのチームへ相談に行ったんです。で、今回のテーマやコンセプトはこういった感じで芝居作りを展開していきたいと相談する際に「効果さんはどうしよう」というお話になりまして。効果さんもその効果によって個性や強みがあるというか、そのなかで今回ゴルフをテーマにした作品というところで、僕は風とか木が揺れる音とか、季節によっては虫の鳴く音とか、とにかく自然の音を素敵に演出したかったんですよね。そういった相談を鈴木さんのチームにしたときに、すぐに出てきたのが長谷川さんのお名前だったんです。それがTVシリーズの前のパイロットフィルムのときの話で。

 

ーーそれはアニメ制作の初期の頃、それこそキャスティングよりも前のことなんですね。

 

horita そうですね。音作りの軸となるお二人が決定してからキャスティングをどうしましょうというお話になります。メインスタッフに相談して、お芝居のなかでキャラクターの声をどなたに担当してもらうか打ち合わせを行い、役者さまにオファーをかけていこうという流れです。

 

ーーまさにアニメにおける音のすべてを担うのがこのお三方であるわけですね。

 

horita そうですね。例えばアフレコであれば、鈴木さんと一緒にタイムスケジュールのなかで録らなくてはいけないものを纏めて、監督が目指すお芝居を役者さまがやってくださっているかなどを確認しつつ収録していきます。そのあとで長谷川さんに「こういった感じのお芝居になっていて、こういった画になっているんですけど、ここに素敵な音をつけてください」というのを監督からの意図をくみ取ってお願いしています。今回はパイロット版からの流れが出来ていたので、今回のシリーズはすごく信頼感があるというか、お渡しした時点で「ここって、こういう音が欲しいんだよね」というのを分かってくださっているのが本当にありがたくて。そういった意味ではやっぱり今回お二人がいなかったら本当に成立しないなと思います。

 

ーーでは改めまして『空色ユーティリティ』について、まずは作品の印象をお伺いします。

 

長谷川 まずパイロット版の段階で絵が綺麗だなって思いましたね。でも本当に女の子がゴルフをしている、それのみというか。舞台がゴルフ場とか自然の音がメインな感じという印象でした。最初は、音楽も少なかったんでしたっけ?

 

horita パイロット版のときはそんなに多くは作っていないですね。

 

長谷川 そうですよね。なのでその間をどう埋めようかっていろいろ考えましたね。鳥の鳴き声をつけようか、とか。

 

horita ゴルフというスポーツの表現で「集中する」表現をしっかりだしたいという監督の希望もあったので、ショットの前後等は逆に音楽を意識的につけて無音を強調していたりします。ただ、クラブハウスの静かでのんびりした空気感も出したいところもあり、そういった部分で長谷川さんは悩まれたかなと思います(笑)。

 

長谷川 そうそう、最初はいろいろ音をつけてみたら、監督から「いや、必要ないです」って言われて。それこそ飛行機とか飛ばしたかった(笑)。ゴルフってたしかに無音になったり無言になるときはあるんですけど、こちら側からすると音響効果の性で何かつけたくなるんですよね。「このままだと静かすぎる」って。

 

ーーアニメにおけるスポーツのジャンルのなかでも、ゴルフはちょっと特殊かもしれないですね。

 

長谷川 特殊ですね。静かというのはなかなかないです。野球でもサッカーでも試合中は歓声とかあるじゃないですか。ゴルフではそれがないですよね。

 

鈴木 しかも『空色ユーティリティ』の劇中内でも大会があるわけじゃないですからね。

 

長谷川 そうね。しかも基本は3人しかいないわけだし。

 

ーーたしかにゴルフのマナーとしても、過剰にキャッキャしすぎてもいけないですしね。

 

horita 最近はもう少しカジュアルになっているみたいですが、ほかのスポーツでいえば走ったり歓声もあったりする。でもゴルフは集中してパキッと一発打つだけという。

 

長谷川 そうなんですよ。動作としてもそれひとつなんですよね。逆にシンプルすぎてちょっと難しい。

 

鈴木 まずゴルフが僕には馴染みのないスポーツだったのと、登場人物の彼女たちもプロではないじゃないですか。なので新鮮でしたね。フレッシュさを感じたとういか、「この子たちはそう思ってゴルフしているんだ」って。ちょっと若い頃に戻った気持ちでした(笑)。

 

ーーキャラクターたちの可愛さやひたむきさが会話となって出ているところはありますよね。

 

鈴木 そうですね、3人が仲良く聴こえるように。もちろんそれは役者さんのお仕事ですけど、ちゃんとそれを拾えるようにと意識していました。

 

ーーたしかに映像を観ていてもそこをしっかりと感じる作品なんだというのがわかりますよね。

 

鈴木 美波ちゃんは引っ張り回されていますけどね(笑)。

 

horita そうですね。長谷川さんもおっしゃる通りファンタジーやスポ根ものであれば分かりやすく作れると思うんですよ。でも「空色ユーティリティ」はそうでなくて、主人公はプロを目指すわけでもないし、下手でも上手でもゴルフは楽しいよ!というところが、この作品のいちばん出したいところなんです。それで、空とか緑がすごく綺麗で、楽しい仲間がいて……というときに、分かりやすい音をつけてキャッキャさせるのは簡単なんですけども、それって”ゴルフが楽しい”には結びつかないんじゃないかなと。プレイにおいての透明感というものはパイロット版のころからすごく大事に考えていました。逆に日常のパートでは、かなりコミカルな音をつけていただいています。

 

ーーでは実際に、『空色ユーティリティ』の音のつけ方というところに迫りたいと思います。順番としてはまずアフレコから始まるわけですね。

 

horita そうですね。アフレコをしたものをアニメーションの尺に合わせて、ちゃんとTVで放送できる尺に収めてから長谷川さんに効果をお願いしています。それと同時に、鈴木さんにも「こういう感じで音楽を出していって、長谷川さんに効果音をうまく乗せてもらいたいです」と相談しながら進めていきます。

 

鈴木 horitaさんから細かい指示をいただけるので、指示に従って作り込んでいきます。台詞のノイズを抜いたり加工したり、音楽はこんな感じかなとボリュームを作るという作業をしてから長谷川さんにお願いしています。

 

horita 台詞でのお芝居が成立した段階で音を乗せるんですけど、静かにさせるために音楽をつけるケースもありますし、盛り上げるために音楽をつけるケースもある。それを汲み取っていただいて、長谷川さんが「あ、ここは静かだけど音楽が鳴っている。じゃあ効果をすごく薄くしとこうかな」とか、逆に「ここは同じように音楽が鳴っているけど、ここって盛り上げたいんでしょ?」ってバッチバチに効果をつけてくださるところもありますね。

 

長谷川 そこは映像も観ながらですね。例えば「あ、ここのギャグシーンはめっちゃ派手だな」とか分かりやすいときがあれば、そこでもう音はつけちゃいますかね。

 

ーーたしかに1話序盤の美波の動きは非常にコミカルで、効果もディフォルメされたものが多い印象ですね。

 

長谷川 そうですね。「ここは欲しいんだな」というのがすぐわかりました。

 

ーーそして最終的には効果も入った状態のものを最終調整して完成、という。

 

horita そうです。長谷川さんのほうでつけていただいたものを、最終的に鈴木さんと監督も同席していわゆるダビングと呼ばれる作業のなかで音を最終調整して、それをツートラックにして納品というかたちですね。

 

ーー音響面でも納品までにはこれだけの過程があるわけですね。そしてそれぞれの役割が非常に大きい。

 

horita 本当に大きいです。効果は、シーンによってはリアルを出すこともあるし、逆にリアルを出すために嘘もつくところもあるんですが、その感覚が長谷川さんと自分は本当に相性が良くて。例えば漫画的な表現とかで「本来はこんな音出ないよね」というときにも、嘘の音をつけたほうがリアルに見えるパターンもあったりするんですよ。それこそ「ポン」って気づきのシーン等になる音なんか世の中にないじゃないですか。「このお芝居だったらこの音だよね」みたいなものを考えていろいろ提案してくださるんですよね。

 

ーーそこはキャストの演技によって効果も変わることもあるわけですね。

 

長谷川 ありますね。明るい芝居、暗い芝居といろいろあるので、その芝居を壊さないように考えています。

 

horita 個人的にも、それを聞かせてもらうのがすごい楽しみだったりするんですよ。ダビングの現場で絵と音を合わせた状態でプレビューしますというときに、思わずニヤけたりはします。「ここでこの音を入れてきたか」みたいにうれしくなっちゃうのはありますよね。

 

ーーまたそこでの効果音の種類もそうだし、そこでのバランスというのも大事になっているわけですよね。

 

長谷川 よく効果のレベル(大きさ)ってどうやって決めるんですか?って聞かれることが多いんですけど、まずは台詞を聴くんです。台詞が大きければ効果は小さくなる。それもミキサーによって変わってくる。

 

鈴木 音の出し方はそうですね。

 

長谷川 そう、ダビングってすごく大事ですよ。効果を生かすも殺すもミキサーなんですよね。

 

鈴木 そこで基準になるのが台詞なんですよ。

 

長谷川 アニメをみるとき、みんなまず台詞を聴くために音量を合わせるじゃないですか。

 

鈴木 台詞が聴こえないとフラストレーションが溜まるんですよね。「えっ、今なんて言ったの?」と思われるのがいちばん怖いです。だからメインは台詞じゃないと全体の音のバランスが崩れてしまうんです。

 

長谷川 聴こえないと放送事故になっちゃう。

 

鈴木 バトルものだったらSEをガンガン出すのはいいんですけど、この作品はそうじゃないんです。台詞と音楽と効果の3つが混ざってちょうどいいバランスにしなくちゃいけない。

 

長谷川 そのなかでも「あ、ここは音楽で盛り上げるんだな」となれば効果はちょっと下がるんです。

 

鈴木 何かを上げたかったら何かを下げなきゃいけないんですよね。そうすると、すごく気持ちよく聴こえるようになります。

 

ーーそのバランスというのはシーンに応じて事前に決まっているものなんですか?

 

鈴木 全部ダビング現場で決めています。「ここはちょっと台詞が聴こえないからボリューム上げるね」とか。

 

長谷川 もちろんそのダビング現場で初めましてではないから、事前になんとなくわかっているのはありますね。

 

horita 直接対面での作業自体はダビングでの1回か2回しかないので背中を預けられる方でないと、とは思っています。なんか、この素材を送ればこういうことをやってくれるだろうと信用できる方でないとお任せするのが怖いというのもあり・・。

 

ーーさて、『空色ユーティリティ』の音響面で重要となるのが、ゴルフに関する音ですよね。例えばドライバーを振ったときのスイング音や打球音などさまざまですが、こうした音はどのようにして用意されるのですか?

 

長谷川 ライブラリーにあるものはそこから用意しますし、新規で必要なものは録ります。僕、ゴルフはまったくやったことがないので、生まれて初めて打ちっぱなしに行きました。

 

ーー実際にプレイもされたんですか?

 

長谷川 はい。劇中に打ちっぱなしが出てくることはわかっていましたが、ライブラリーになかったので録りに行こう、と。

 

ーー1話の打ちっぱなしのシーンは音も非常にリアルだなと思っていましたが、長谷川さんが実際に録りに行かれたんですね。

 

長谷川 そう言っていただけるとありがたいです。自分のスペースにマイクを置いて、自分でクラブを振ってみました。最初はまったく当たらなかったです(笑)。

 

ーーまさに1話での美波さながらに(笑)。

 

長谷川 あ、美波ちゃんが初めて打つときの音、あれは僕が人生で初めて打った音です。

 

ーーえっ、そうなんですか?

 

長谷川 普通におっさんが打った音ですみません(笑)。大体美波ちゃんがミスるときは僕がミスったときの音ですね。

 

ーーもちろんゴルフの打球音は1種類だけじゃなくて、それこそゴルフ未経験の美波のような音もなくてはならないですからね。

 

長谷川 それこそ監督はゴルフ経験者なんですよね。

 

horita そうです。なので「このギアだとこの音が出ます」というのを、今回は監督が実際にすべてのギアで打った音の基本参考素材を資料としてお二人にお渡しました。ただ、打球音もしっかり当たるだけじゃなくてミスショットもある。どの傾斜で打つのかとか、草はどのくらい生えてる、あるいはバンカーとか全部違う音になるわけですよね。

 

長谷川 そこは監督が厳しかったですねえ(笑)。「下手なときは”ゴン”って音がします」とか言われても、「いや、そんな音はライブラリーにないな」とか。あとはミスってボールが木に当たった音とかも当然ないので、「やばい、録りに行かなきゃ」ってなりました(笑)。

 

horita わかりやすい綺麗な音だと多分ライブラリーにもいくつかあったと思うんですけど、今回はそうじゃないし、ゴルフ練習場の音なんてないですよね?

 

長谷川 ないです。作品的にも半分ぐらいが練習場にいますからね。

 

horita コインを入れて球がガラガラガラって出てくる素材なんてないですよね(笑)。

 

ーーあの音も打ちっぱなし特有の音ですが、またリアルでしたね。

 

長谷川 あれも機械にマイクを近づけて録りました(笑)。

 

horita お芝居のなかでそういった音が聴こえたときに、ゴルフをやっている方々は「そうそう、これこれ」ってやっぱりなるじゃないですか。リアルな音を入れることによって彼女たちが本当にその練習場にいるんだという感覚になるんですよね。

 

ーー美波たちはかなりの数をスイングしていますが、そこでのバリエーションも非常に多彩ですよね。

 

長谷川 そうですね。そのなかでもライブラリーにあるものはそれを使うんですけど、ないものは千葉のゴルフ場で一日かけて録りましたね。

 

ーーやはりそこは生の音にこだわられていたわけですね。

 

長谷川 基本ゴルフはみんなこだわっちゃうんですよ。そこはごまかしが効かないので、録るしかないですよね。あとはプロが打たないとプロの音にはならないんですよ。だからプロの人に来ていただいて録っていますし、逆にアマチュアさんにも打ってもらうんです。でも意外と、素人にはわからないですよね(笑)。

 

ーー経験したことがないと、細かなスキルの違いというのを判別するのは難しいですよね。

 

長谷川 多分ゴルフをやっている人だったらわかるんですよ。だから監督がすぐわかっちゃう。「あそこはアイアンです」とか(笑)。話を戻すとプロの人に、いろいろミスショットを打ってもらったりしています。林に刺さるところとか、あとダフったりするところも実際にダフって打ってもらっています。

 

ーーわざわざプロにミスショットを打ってもらう。そこまでやらないといけないわけですね。

 

長谷川 そうなんです。シンプルすぎてごまかしが効かないんですよね。ゴルフってその一打でしかない。それこそ派手につける方が簡単なんですよ。

 

鈴木 シンプルだからこそ難しいんですよね。

 

horita 丁寧に作らないと全部バレちゃうので。

 

鈴木 僕の場合も、音楽も台詞も画面に合うように調整していきます。ゴルフ場とか外の場合が多いのですが、外はそんなにアンビエンス(屋内での音の鳴り)がかかることはないんです。だから外に対して部屋のなかではアンビエンスも少しかけています。分かりやすいのはお風呂での会話ですかね。場面によって違和感なく観ていただけるようにしています。

 

ーー引っかかりなく心地よく観られるようにすると。

 

鈴木 基本的にそうしています。ただ、演出として強調したいところは強めに加工することもありますよ。SEや音楽で強調することもあります。だけど、それが多すぎたら観ていて気になってしまうんですよね。

 

horita 例えば先ほどお風呂の話が出ましたけど、それこそがリアルにするための嘘なんですよね。お風呂場って反響しているとすごくリアルに聴こえるじゃないですか? でも実際お風呂場で芝居のシーンにあるような距離間で会話しても、反響なんか大してしないんですよ。

 

ーーたしかにそうですね。

 

horita もちろん大浴場で叫んだら反響するんですけど、お風呂場は反響するイメージというのがみんなついちゃっているので、反響させたほうがリアルに聴こえる。

 

長谷川 今時ピチョンって天井から水滴も落ちないですからね(笑)。

 

鈴木 ほかにも携帯電話の音だって、あんなフィルターがかかったような音にはならないんですよね。だけどそれはアニメ的表現ということで加工しています。

 

horita 今のスマホから聴こえる音は普通の声と変わらないじゃないですか。でも、まるで機械を通したような声にするというのも、お芝居として観たときにわかりやすくしたほうが自然に聞こえる。そのために嘘をつくんですよね。2話に美波と遥がシャワーを浴びるシーンがあるじゃないですか。

 

ーー美波と遥がシャワー室で会話をするシーンですね。

 

horita 右側に美波がいて壁1枚挟んで通路があります。もう1枚壁を挟んで遥がいて、ふたりともシャワーを浴びています。あそこでカメラワークが変わるたびに壁2枚を挟んで、シャワーの音がシャーって鳴っているときに、美波からは遥の声ってこのぐらいで設計しましょうとか。美波にカメラが向いているときは遥の声をこう、今度は遥のカットになったら美波の声にフィルターをこうかけましょうとか。。リアルだったらシャワー中に相手の声なんて聞こえないんですよ。シャワーの音がうるさくて。そこで実写とは違う嘘をつくわけです。

 

ーーまた効果音のなかでもゴルフコースなどの自然の音などについてはいかがですか?

 

長谷川 この作品は劇中では春から始まるんですよね。そこでうるさすぎても、静かすぎてもダメ。でも春先だから虫が鳴いていない。じゃあどうしようとなったら、鳥だよねと。ほかにも街中だったらわかりやすいんですけど、ゴルフコースってずっと同じ場所にいるので音を変えるのが大変なんですよ。

 

ーーたしかに2話はほとんどコースに出ているシーンなので、そこでの変化は難しいわけですね。

 

長谷川 そうなんです。このシーンは音楽で盛り上げたり、こっちのシーンに音楽がなければちょっと賑やかな鳥を入れようとか。明るいお芝居のときにはそういうものを入れて、しんみりしていたら静かにしたりしました。

 

ーー自然の環境音も、例えば風の描写もさまざまですよね。

 

長谷川 風って強い風、弱い風いろいろありますけど、レベルを抑えすぎるとTVから聴こえないんですよ。でも出しすぎるとうるさい。だから最初はぶわーって風を出して、途中からさーっとした音にする。誇張するときはするんですけど、そこもポイントポイントですね。ずっと誇張していても疲れるだけですから。

 

ーーこれは改めてアニメを観返したくなりますね。自然に心地よく観られるようにたくさんのこだわりが詰め込まれている。

 

horita 個人的には音っていうのはあまり印象に残らないのがいちばんかっこいいなと思っていて。映像を観て「音がよかった」とかではなくて、「芝居に夢中になっちゃった」って言われるのがいい。夢中になって自然と画面に入り込んじゃう。自然に音が入れば入るほど芝居にのめり込むことが出来ると思うので。逆に音に違和感があると、せっかく集中していたものが我に返っちゃうということが多くて。もちろん意図的に引っかかるようなつけ方もして引き立たせたりもしますが。

 

ーーなるほど。

 

horita 例えば集中して一球打つときに、長谷川さんは思い切って効果を0まで持っていくんですよね。集中して観ているときに音が0になると画面に集中する。無音というのは人間にとって非常にストレスなんです。その緊張から「今だ」というときに打った音を思いっきり使うんです。それがすごく気持ちよくて、その後すっと入る風の音とかを出すことによって、キャラクターやゴルフのプレイに対するカタルシスを思いっきり解放させてあげることができるのかなって思います。

 

ーーでは最後にみなさんから『空色ユーティリティ』を楽しまれている方々に、改めて音響面での観どころ、聴きどころを教えてください。

 

長谷川 これを読まれてからもう一回1話から観てもらうと、見え方や聴こえ方が変わると思います。それを楽しんでほしいですね。ゴルフのことをまだ知らない人たちも、その裏側が知れるというか、そこから別の楽しみ方ができるかもしれないですね。

 

ーーキャラクターの打球音にもいろいろあることを知ってみると面白いですよね。なかには長谷川さんが打ったものもあるという。

 

長谷川 美波の音を聴いて「へたくそ!」って思ってもらえれば(笑)。

 

ーー「これが長谷川さんの音なんだ」と(笑)。

 

長谷川 練習場に行ったときも、朝9時ぐらいからおじさま、おばさまがいっぱいいらして。僕だけがすごく下手で、みんなすごいなぁって。

 

ーーアニメをご覧になっている人たちにもぜひ行ってもらいたいですね。美波や長谷川さんの気持ちを追体験するというか。

 

長谷川 朝に体を動かすのは気持ちいいですよ。空の青さもすごく綺麗ですし、おすすめです。最初は球が全然上がらないですけど(笑)。

 

ーーそこからゴルフにハマっていくかもしれないですしね。

 

長谷川 まあ僕は音が録れたから、もう満足しちゃっています(笑)。

 

鈴木 音響面だけじゃなくて、3人の女の子たちがだんだん成長していく姿って美しいというか、そこに友情もあるしギャグ要素もあるし、ここからもっと面白くなりますよね。

 

ーーお話として美波と遥、彩花が楽しそうにしているというのがいいですよね。

 

鈴木 それがこれからもっと続くので、その関係性や美波ちゃんの成長、そこが見どころだと思います。アフレコからダビングまで、僕はもう純粋に楽しみながら作っているので、みなさんにも楽しんでいただきたいですね。

 

horita そうですね。そもそもお客さまに作品を観ていただいてもらっているわけです。観てくれている方に対して出来ることがあるんだったらちゃんとやるべき、ということを常に意識しています。作品作りに対する意識が同じお二人だからこそ今回僕の背中を預けさせていただきました。ゴルフを題材に扱っている以上、ゴルフをプレイされている方が「嫌だな」と思うことはダメだし、それって本当に失礼じゃないですか。ゴルフに限らず、その題材にちゃんと真摯に向き合うことが作品を届けることの基本だと思っているので、それを今回の音響チームでもできたかなと。この先の話数も楽しんでいただけるよういろいろと仕込みましたからね(笑)。そこも含めてこの先も是非楽しみにしていてください。

 

TEXT BY 澄川龍一

 


 

TVアニメ「空色ユーティリティ」音楽商品情報

 

2025/02/19 発売

「空色ユーティリティ」キャラクターソング・ミニアルバム

https://canime.jp/product/PCCG000002429

 

2025/03/26 発売

「空色ユーティリティ」オリジナル・サウンドトラック

https://canime.jp/product/PCCG000002431

 

TVアニメ「空色ユーティリティ」作品情報

2025年1月3日よりTOKYO MX、テレビ神奈川、MBS、BS朝日ほかにて放送中!

 

CAST

青羽美波:高木美佑

茜遥:天海由梨奈

星美彩花:後藤彩佐

秋名泉美:花守ゆみり

田所昌夫(マサ):井上和彦

田辺長介(チョウ):堀内賢雄

田中哲弘(テツ):森川智之

 

STAFF

監督・キャラクターデザイン:斉藤健吾

シリーズ構成:佐藤裕

脚本:佐藤裕・皐月彩・水月秋

原案協力:望公太

色彩設計:武田仁基

美術監督:工藤義隆

撮影監督:呉健弘

編集:重村建吾・佐藤彩香

音楽・音響監督:daisuke horita

音楽制作:Yostar Pictures Sounds・ZENTA STUDIO

アニメ制作:Yostar Pictures

 

INFORMATION

HP:https://anime-sorairo-utility.com/

X:https://twitter.com/@sorairo_utility

YouTube:https://www.youtube.com/@sorairo_utility 

Instagram:https://www.instagram.com/anime_sorairo_utility/ 

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©空色ユーティリティ

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