放送中のTVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』音楽連載企画 第3回!北澤ゆうほ × 音楽プロデューサー・渡部 直 ED主題歌「リリィ」対談インタビュー

2025/10/17

TVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』音楽連載企画「私が聴きたい、うらばなし」 

第3回:北澤ゆうほ × 渡部 直

 

現在、放送中のTVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』。その音楽の魅力に迫るべく、本作の音楽関係者たちによるインタビュー連載企画「私が聴きたい、うらばなし」がスタート!第3回は、ED主題歌「リリィ」の作詞・作曲を手掛ける北澤ゆうほ、音楽プロデューサー・渡部 直が登場。楽曲の制作エピソードについて語ってもらった。

 

北澤ゆうほ
渡部 直

――北澤さんといえば、バンド・the peggiesやソロプロジェクト・Q.I.S.としても活動されていますが、それとは別に楽曲提供も行われています。素朴な質問ですが、ご自身で歌われる楽曲と提供する曲とでは、詞と曲を書かれる際に何か意識の違いはあるのでしょうか?

 

北澤 かなりマインドが異なりますね。例えば、the peggiesやQ.I.S.で自分が歌う楽曲を作るときには、十年後や二十年後に自分がその曲に対して胸を張って「これは自分の言葉と音です」と言えるかどうか、未来の自分もその内容に背かずに生きていけるかどうかも考えています。対して、提供する楽曲では、その歌う人やキャラクターの思いを軸に内容を考えていくので、自分なら歌わないフレーズやメロディも使うことができるので、面白いことができる印象があるんですよね。表に出せなかったフレーズにスポットライトを当てられたり、アレンジを別の方が担当してくださると予期せぬ表現に出会うこともあったりと、楽曲提供をする機会をいただくのはとてもワクワクしています。

 

――今回北澤さんが楽曲提供された「リリィ」を歌うのは、上田麗奈さん演じる比名子です。ちなみに、キャラクターと声優――例えば「リリィ」を歌うのが上田さん本人、という形であれば、またメロディや詞の内容は変わっていましたか?

 

北澤 声優さんのソロ曲となると、アーティスト活動でどのようなものを見せたいのかという部分を意識しながら声色や歌の雰囲気を参考に、「こういう楽曲なら、ファンの方が喜んでくれるかな?」と想像を膨らませながら書いていきます。一方でキャラクターソングとなると、アニメの世界観をしっかりと読み込んで、そのキャラクターの心情に寄り添った楽曲にすることを第一に考えていますね。その時点ではあまり誰が演じるのか、どんなお芝居なのかは考えないことが多いかもしれません。『わたたべ』の場合は、オファーをいただいた時点でPVが公開されていたので、上田さんのセリフを何度も聞いていましたけどね(笑)。

 

――そもそも、北澤さんに『わたたべ』エンディング主題歌の作詞曲をお願いしたのは、どういった経緯だったのでしょうか。

 

渡部 まず、今回のエンディング主題歌は比名子が抱えている思いを軸に、それを吐露するような楽曲にしたいという前提がありました。そこで僕が真っ先に思い付いた人が北澤さんだったんです。以前、『空色ユーティリティ』という作品のキャラクターソングを北澤さんにお願いしたとき、制作の方針として、作品の世界観に自己投影をしながらイメージを掴んでいく、とお話しされていたのがとても印象的で。北澤さんなら絶対に比名子の心情を理解してくださると信じて、お願いをさせていただきました。

 

北澤 お話をいただいてから『わたたべ』の原作マンガを拝読したのですが、これまで私が楽曲提供をさせていただいた作品とは全く異なるジャンルだなと感じて。でも、このテイストの作品に私が求められたということは、これまで開けてこなかった引き出しの中から要素を探す方が適していると感じました。そして、一緒に渡部さんからいただいた資料がとても具体的に書いてあって、やりやすかったです。

 

――実際に楽曲を制作するにあたって、最初にされたことはなんですか?

 

北澤 先ほども触れましたが、ご依頼をいただいた時点(2024年11月)で既にYouTube上で『わたたべ』のティザーPVが公開されていたんですよ。そこでアニメにどんな色が付くのか、上田さんをはじめキャストの皆さんがどんなお芝居をされるのかを確認しました。その上で、『わたたべ』には上手に書いた歌詞というよりも、比名子が自然に綴った言葉の方が合う気がしたんですよね。そこで私も、机に向かって作るのではなく、日常の隙間でギターを弾いて、自然に言葉が出るのを待ったんです。言葉が出てくると、すぐにメロディも思い浮かんだので、最初のフレーズが決まってからは早かったですね。

 

渡部 2024年のクリスマス頃に仮歌付きのデモをいただいたのですが、それが本当に素晴らしくて。結果的に、そこからほとんど直さず皆さんに聴いていただいている現在の楽曲になりました。

 

北澤 そうでした。そもそも、比名子が海辺の街を歩きながら、どんな思いを抱くのか考えたとき、全てが自分を責める言葉になっていそうだなと感じたんです。外の景色を見ていても、それを通して自分を責めている、と言いますか……。となると、尖った言葉でなく、自分に対して送る手紙、という体裁にした方が優しい言葉になるのではないかと感じたんですよね。そこから「心はこんなにも酷く重いのに 身体はふわふわと軽くて ほのかに香る方へ誘われてゆくみたいな そんな日々でした」というフレーズが生まれて、ずっと死にたいと考えている比名子の感情をリアルに、だけどストレート過ぎずに描くことができました。あと、二番の「最低だ だって 君を傷つけてしまったとしても 心が動くか分からないんだ」は当時の最新話を読みながら思いついたものだったり、私としても手応えを感じていたので、ほとんど直されなくてホッとしました(笑)。

 

渡部 僕が求めていた楽曲そのもので凄く嬉しかったですね。これならファンの皆さんも喜んでくれるぞ!と。そこから佐藤さんに入ってもらって編曲を進めてもらいましたが、デモから直したのはイントロやドラムのフィルインくらいです。あとはテンポを少し調整したくらいですね。

 

北澤 そうですね。実はデモの時点では89秒から少し溢れてしまっていたんです。ただ、削れるフレーズがどこにもないということで、皆で相談した結果、少しテンポを早めてみることにしました。結果的に楽曲に清涼感が加わって良い形で着地することができました。

 

――佐藤厚仁さんによるアレンジ後の音源はいかがでしたか?

 

北澤 アレンジの方向性によって、お通夜のような雰囲気の楽曲になるかも……という危惧はありました。でも、佐藤さんが私のデモでは出せていなかった爽やかさを醸し出してくださって、とても有り難かったです。

 

渡部 ギター、ベースは佐藤さん自身が弾いてくれましたし、ドラムとバイオリンもプロのミュージシャンを迎えた、佐藤さん拘りのサウンドに仕上がっていますね。エンジニアの青木さんも細かいところまで凄く拘ってくれました。何より、上田さんの素晴らしい歌声と楽曲が調和していて本当に素敵な主題歌に仕上がったなと。ぜひクリエイター陣の拘りを感じてほしいです。

 

――レコーディング時には上田さんに何かオーダーはされましたか?

 

渡部 レコーディング当日は原作者の苗川(采)先生が愛媛から駆けつけてくださいました。そして、上田さんには比名子の声色を常に再現するというよりも、比名子が歌っているようなイメージでお願いしてみようとなりました。僕らも喋っているときと歌っているときとでは声のトーンが異なりますし、北澤さんがここまで比名子の内面に寄り添った楽曲を作ってくださったのだから、ファンの皆さんに喜んでいただけるようなリアリティさを追求しようと。

 

――楽曲が完成した今、率直なお気持ちをお聞かせください。

 

渡部 自信を持って送り出せる楽曲になってくれてホッとしています。僕としては、これまで『わたたべ』を応援してくれた皆さんの期待を裏切るようなことがないよう制作を進めてきましたので、少しでも多くの方々に楽曲をお楽しみいただけたらと思っています。制作期間中はずっと『わたたべ』のことばかり考えながら過ごしていて、いざ、エンディングアニメと楽曲がハマった瞬間、とても感動して涙がでました。制作に携わってくれたメンバーには心から感謝しています。本当にありがとうございました。そして、ファンの皆さんにおかれましては、上田さんや北澤さん、佐藤さんを中心としたクリエイターの拘りが詰まった「リリィ」をぜひ沢山聴いていただき、『わたたべ』の世界観に浸っていただければと思っております。よろしくお願いします!

 

――北澤さんはいかがですか?

 

北澤 これまで自分の中に閉じ込めていた要素を「リリィ」として昇華できたので、とても嬉しく感じています。ただ、楽曲というのはこれからが本番です。『わたたべ』が放送されて、視聴者の皆さんが「リリィ」を単体で聴きたいと感じてもらうことが成功ですからね。そのために、上田さんの声や佐藤さんのアレンジがあったと思っています。また、『わたたべ』の放送が終わっても、心細くなったときや自分の気持ちの居場所を再確認したいときにぜひ聴いていただきたいですね。一見、暗い楽曲だと思うかもしれませんが、実は爽やかで前向きな楽曲になっています。そんな思いを込めた歌詞も読み込んでいただけると幸いです。


リリィ –  八百歳比名子(CV:上田麗奈)[Music Video]

 

取材・文:太田祥暉(oriminart)

 


 

作品情報

 

電撃マオウにて大好評連載中!

少女と妖怪の出会いを美しくも切なく描いた原作・苗川 采による「私を喰べたい、ひとでなし」が2025年10月2日よりTVアニメ好評放送中!!

 

—ON AIR—

2025年10月2日より好評放送中!

AT-X:毎週木曜22:30〜

 リピート放送:毎週月曜10:30〜/毎週水曜16:30〜

TOKYO MX:毎週木曜23:30〜

サンテレビ:毎週木曜24:00〜

B S 日テレ:毎週木曜25:00〜

愛媛朝日テレビ:毎週金曜25:50〜

 

—STREAMING—

ABEMA・dアニメストアにて毎週木曜23:30〜地上波同時・最速配信中!

Prime Videoほか その他サイトにて毎週火曜23:30〜配信中!

※詳細は各サイトをご確認ください

※放送・配信日時は予告なく変更となる場合がございます

 

—INTRODUCTION—

「私は君を喰べに来ました。」

突如現れた人魚の少女・汐莉は海辺の街に独り暮らす比名子の手を取り、優しく語りかける。

比名子の持つ血肉は、特別に美味しいという。

それは数多の妖怪を惹きつけるほどに…。

汐莉は、成熟し、最高の状態を迎えるまで比名子を守り”いずれ自分が喰べる”と約束する。

比名子の胸には「このひとなら私の願いを叶えられるかもしれない」という

切なる想いが浮かび—。

 

—CAST—

八百歳比名子:上田麗奈

近江汐莉:石川由依

社 美胡:ファイルーズあい

 

—STAFF—

原作:「私を喰べたい、ひとでなし」苗川 采(KADOKAWA「電撃マオウ」連載)

総監督:葛谷直行

監督:鈴木裕輔

シリーズ構成/脚本:広田光毅

キャラクターデザイン:郁山 想

色彩設計:水野多恵子

美術監督:工藤義隆

撮影監督:武原健二

3DCG:志田じしろ

編集:瀧川三智

音響監督:納谷僚介

音響効果:斎藤みち代

音楽:井内啓二

アニメーションプロデューサー:高木秀仁

プロデュース:インフィニット

アニメーション制作:スタジオリングス

 

—MUSIC—

<Streaming & Download>

オープニング主題歌:吉乃「贄-nie-」

作詞・作曲:ユリイ・カノン 

編曲:ユリイ・カノン / Naoki Itai(MUSIC FOR MUSIC)

https://lnk.to/yoshino_nie

 

エンディング主題歌:八百歳比名子(CV:上田麗奈)「リリィ」

作詞・作曲:北澤ゆうほ 

編曲:佐藤厚仁

https://lnk.to/watatabe_hinako

 

<CD>

2025年12月24日(水)発売

TVアニメ「私を喰べたい、ひとでなし」オリジナル・サウンドトラック

3,850円(税込) / PCCG-002473

ご予約/ご購入はコチラ:https://lnk.to/pccg-02473

 

—COMIC—

「電撃マオウ」にて大好評連載中!

「私を喰べたい、ひとでなし」コミックス第1〜10巻大好評発売中!

カドコミWEB(旧コミックウォーカー)掲載中!

https://comic-walker.com/detail/KC_003258_S

 

—HP/X—

アニメ公式HP:https://wata-tabe.com 

アニメ公式X:https://x.com/wttb_tv/  @wttb_tv 

アニメ公式TikTok:https://www.tiktok.com/@wttb_tv 

 

©2024 苗川 采/KADOKAWA/わたたべ製作委員会

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