放送中のTVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』音楽連載企画第11回！近江汐莉を演じる、石川由依の単独インタビュー公開！

2025/12/12

TVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』音楽連載企画「私が聴きたい、うらばなし」第11回：石川由依（近江汐莉役）

現在、放送中のTVアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』。その音楽の魅力に迫るべく、本作の音楽関係者たちによるインタビュー連載企画「私が聴きたい、うらばなし」。第11回は、近江汐莉を演じる、石川由依が登場。第11話ED主題歌「リリィ［Another ver.］」や作品の魅力について語ってもらった。

――石川さんがエンディング主題歌「リリィ」をカバーすると伺ったのは、いつ頃のことだったのでしょうか。

石川　全話数の収録が終わって、『わたたべ』のお仕事が一区切り付いたな……と感じていた頃です。厳密には放送時の取材であったり、配信やイベントの登壇もあったりするので、まだまだ『わたたべ』には携わるんですけど、もう汐莉を演じることはないのかなと思っていたので、まさか！　と驚きましたね。詳しくスタッフさんにお話を聞いたところ、ファイ（ルーズあい）ちゃんが第4話でエンディング主題歌を担当したので、ならば汐莉も、と決まったらしく。まさか私も歌っていいんですか？　と嬉しい気持ちになりました。

――今回歌われた「リリィ」を最初に聞いた際の印象をお教えください。

石川　第一印象は、とても耳に残るいい曲だなと感じました。メロディ自体は明るめなんですけど、比名子が歌っていることを考えると仄暗さも感じられて……。加えて、一筋の光が見えるような聞き応えのある曲だなと。

――とはいえ、「リリィ」はもともと上田麗奈さん演じる比名子が歌っていた楽曲です。汐莉で歌うというのは、かなり難しい面もあったのではないでしょうか。

石川　そうなんですよ！　比名子のために書かれた曲ですし、汐莉が歌うからといって歌詞が変わるわけでもありません。なので、汐莉の心情と必ずしも一致するわけではないんですよ。よくキャラクターソングを歌うときには、自分が演じているキャラクターの心情を歌詞に乗せるように意識するのですが、今回の場合はそうもいかないなと。比名子目線で書かれた「リリィ」の歌詞の中から、汐莉もこういう気持ちを抱いたことはあるよね、と似た場所探しをして、歌う際の感情を引き出していくことから始めました。

――ちなみに、上田さんの原曲での歌声や比名子役のお芝居について、どのような印象をお持ちですか？

石川　暗さだけではない、色々な情緒を感じられるお芝居ですよね。ただ暗いだけだと『わたたべ』という作品全体が暗くなってしまいかねないですけど、声の中に温かみや切なさが含まれているので、これが比名子なんだ……！　と一瞬で納得できました。そういえば、実は私もオーディションでは比名子役を受けていたんですよ。自己分析として、自分の声が暗めなことが分かっているので、そういう意味では汐莉よりも比名子に向いているのかも？　と考えていたのですが、これはぴったりだ、と圧倒されました。一方で、汐莉は表情だけでは胸の内まで読みきれないキャラクターなので、序盤の収録はかなり難しかったんですけどね（笑）。

――（笑）。楽曲の話に戻すと、収録が終わった後にレコーディングされたわけですが、汐莉のキャラクター感を掴まれた後だったからこそ、「リリィ」の歌詞もすぐに理解できたのでしょうか？

石川　苗川（采）先生の原作マンガもありますけど、確かに汐莉が何を考えていて、比名子にはどういった想いを抱いていたのかが完全に掴めた状態でしたからね。そこは普段のキャラクターソングのレコーディングよりも有り難かったです。まず「リリィ」は、北澤（ゆうほ）さんが全部を言い切らず、想像力を掻き立てるような歌詞を書いてくださっていることがポイントで。汐莉は孤独だったときに比名子と出会い、世界が変わっていきました。その内容が「リリィ」の歌詞の中に当てはめることもできる気がしたんですよ。飄々とした雰囲気からはとてもそんなには見えませんけど、汐莉も寂しさや息苦しさを抱えて生きていたはずで、その辛さが比名子との出会いで晴らされたように感じていて。そういったストーリーの流れを汲みながら、レコーディングに臨んでいました。

――特に印象深いフレーズはどこですか？

石川　二番のサビ前ですね。「ありふれたことさえも出来なくなって　ただいつも窓越しに世界を見てた　この瞳で何を見つけられるだろう」というフレーズがあって。ここから比名子に想いを告げたいけれど、どうしても噛み合わない、そんなもどかしさを感じたんですよ。自分の負い目もあるし、息苦しさを感じているような……。そんな描写が直接『わたたべ』にあるわけではないですけど、きっと汐莉はそんな想いを抱えていたんじゃないか、と最初に音源と歌詞をいただいたときから直感して以来、大好きなフレーズです。

――レコーディング時、他に意識したことはありましたか？

石川　大前提としてうえしゃま（上田麗奈）が歌った後だったのですが、こういうカバー曲って、原曲に合わせていくのか、あえて別の雰囲気にするのかはケースバイケースなんです。今回はディレクションの感じから、うえしゃまに合わせるのが汐莉としても正解なのかなと。でも、聴きすぎるとトレースになってしまうので、うえしゃまの原曲と仮歌をそれぞれ聴いて、汐莉版の世界を作ることを第一に考えていましたね。汐莉らしさも出ているといいなと思います。

――そしてそんな石川さんが歌う「リリィ」が『わたたべ』第11話でようやく放送されましたが……。

石川　ついにこの話ができて、とても嬉しいです（笑）。本編ではようやく、汐莉が比名子と向き合って話し始める展開に突入しました。お互いの譲れない想いが強すぎて、もどかしい展開になっていますが……残り2話もお楽しみください！　汐莉役を演じていた身としても、かなりしんどい展開が続いていきます。比名子という存在は汐莉にとって救いで、愛おしからこそ生きていてほしい、幸せであってほしいと願っている。けれど、比名子は汐莉に喰べてほしいと頑なに願っている。その残酷な食い違いの果てを、ぜひ「リリィ」とともにご注目ください。

取材・執筆：太田祥暉

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