「ゴルフで見つける、私の”特別”」TVアニメ『空色ユーティリティ』 ピアニスト・矢吹 卓とdaisuke horitaによる、対談インタビューが公開!

2025/2/27

TVアニメ『空色ユーティリティ』の音楽に迫るインタビュー連載第7回。今回から劇伴のプレイヤーをフィーチャーしたインタビューをお届けしよう。まずは本作劇伴でも印象的なピアノを聴かせている矢吹 卓に話を聞いた。これまでさまざまアーティストの作編曲、レコーディング、また自身のソロワークでも活躍するピアニストが、『空色ユーティリティ』の劇伴にどのような音色を響かせたのか。今回は劇伴をはじめ本作の音楽を担当するdaisuke horitaとともに、型破りな劇伴制作の裏側を尋ねてみた。

 

ーーTVアニメ『空色ユーティリティ』音楽連載ということで、今回は劇伴の演奏に参加されたピアニストの矢吹さんにお伺いします。そもそもの話ですが、こうしたアニメの仕事で、事前に作品の情報はどれぐらい入れて現場に臨まれるのですか?

 

矢吹 卓 正直にいうと劇伴の録音というのは、演奏の発注が来た時点ではなんの録音かまで知らされないで行くことがほとんどなんですよ。

 

ーーそうなんですか?

 

矢吹 どんなアニメで使われるのか知らないまま演奏することが多いですね。こっちから聞かないと放送されるまで作品がわからないことも多いです(笑)。今回のように事前に作品を知ったうえで、現場の皆さんと相談しながら演奏させていただくことのほうが珍しいかもしれないですね。

 

矢吹卓

ーーそれこそ、矢吹さんはさまざまなアーティストとの演奏やソロワークもされてますが、劇伴はそれらの向き合い方とは違ってくるわけですよね。

 

矢吹 そうですね。この作品に関しては、基本任せてもらえているので、自由度が高いんですよ。逆にいえば、事前に作り込んでいてもhoritaさんのイメージと違っていたら意味がないので、なるべく現場でコミュニケーションをとりながら作っていきました。しっかり譜面通りに弾かなきゃいけない曲も今回ももちろんありましたが全体的に自由度は高かったです。

 

ーー事前の資料もそこまで作り込んだものではない場合が多いわけですか?

 

矢吹 そうですね、メインとなるメロディが少し書いてあって、あとはコードが書いてある。ざっくりとしたデモ音源を送っていただいてるのでそれを聴いて、現場で作ってくというのがほとんどでした。

 

ーーたしかに『空色ユーティリティ』の劇伴を聴かせていただくと、矢吹さんのピアノは伴奏的なものもありつつ、自由なフレーズを聴かせるような楽曲も多いと感じます。

 

矢吹 逆にいうと同じこともう一回やれって言われてもできる自信がないですね(笑)。その場の雰囲気で弾いていることも多いので。ピアノはそれぐらい自由な録音になっています。

 

horita 今回、矢吹さんにピアノをお願いしたのは、楽譜をしっかり落とし込むクラシックから、即興のジャズ、はたまたミスタッチまで再現したいモノまで色んなジャンルをプレイされてきた方だからなんですよね。そういった現場でのグルーヴ感や、こちらの意図を汲み取っていただけるピアニストを探していたときに、ZENTA(ギタリスト、エンジニア)さんから「それなら矢吹さんいかがでしょう?」とご紹介いただきました。

 

矢吹 僕の場合は浅く広くという感じで、逆に完全なクラシック、完全なジャズをやれと言われたら少し違うんですよね。いわゆる総合格闘技と一緒ですね。

 

ーーなるほど、打撃も寝技もできるタイプといいますか。

 

矢吹 そうです。例えばボクシングのルールだったら勝てないけど、総合的にはうまくできる。ジャズ的な曲ならこういう雰囲気が合うかな、クラシックの要素があればこう弾こうって対応できる経験を積んできたと思っています。

 

ーーでは改めて、『空色ユーティリティ』での演奏についてお伺いします。本作の劇伴はオーセンティックなロックからジャズ、カントリーといったアメリカ南部の要素も感じさせるものなど多彩です。収録に際してはリハーサルふくめ、どの程度打合せがあるのですか?

 

矢吹 現場では、録るとなったらもう始まっちゃいますね。まずは一回録ってみて、そこでアイディアを出しつつ、修正していく感じで、事前に練習する時間はせずに始めるのが普通ですね。

 

ーーまずは一度弾いてみるところからスタートするわけですね。

 

矢吹 そうですね。事前にデモを聴いているので、メロディやほかの楽器のイメージを想定しつつ、そこの邪魔はしないように、というところは気をつけています。

 

ーー劇伴も1曲だけではないですもんね。

 

矢吹 初日で何曲やりましたっけ?

 

horita かなり録りましたよ(笑)。

 

矢吹 最初の収録ではピアノだけで20曲以上を録った記憶があります。だからそこでいちいち練習して、という時間はないんですよね。それが楽しいところでもあるんですけど。

 

ーーそう聞くと非常に緊張感のある現場のように想像できますが……。

 

矢吹 最初はもちろん緊張しますよね。どういうイメージを欲されているのか、それが自分で大丈夫なのかとか思ったりしますけど、結果すごくよく言ってくださるので、非常にやりやすい環境で弾かせていただきました。そこは非常にありがたかったですね。

 

hoirta 最初は僕もZENTAさんも10曲くらいを録る想定で臨んだんですが、最初のテイクから素晴らしくて。僕がオーダーしたものから「こういう解釈が矢吹さんなんだ」と伝わってくるのがすごくうれしかったんですよね。それの解釈がテーマにすごいハマりました。また、楽曲からニオイを感じ取ってくださるというか、この方は少ない言葉数ですぐ理解してくださるな・・と。結果20曲以上も録れたんです。

 

ーーなるほど。細かい部分は修正して仕上げていくイメージでしょうか。

 

矢吹 部分的なリテイクはほとんどなかったと思います。

 

horita テイク自体を修正するというよりかは、また別のテイクを弾いていただくという相談が多かったですね。僕としてはパンチイン(修正箇所のみ取り直して部分的に差し替える)は楽曲のグルーヴを損ねるので今回は可能な限りやりたくなかったんです。結果として、当初のイメージとは違ったテイクも生まれて。そこから作品に合うと感じたものは現場判断で採用するということもありました。結果鍵盤に合わせてアンサンブルの方を変更することもありました。

 

ーーちなみに、矢吹さんが演奏されているなかで、ほかの楽器はどの程度意識されていますか?

 

矢吹 例えばフィルインといって、メロディの隙間に入れるちょっとしたオカズがあるんですけど、入れすぎてもいけないし、まったくないと退屈になってしまうので、その辺りのさじ加減は常に気にしていますね。ほかには、デモを聴くと打ち込まれたサックスとかが鳴っていて「これはあとで生のサックスになるんだな」とイメージしながら邪魔をしないように弾いています。これは歌ものでもそうで、ボーカルとぶつからない演奏は必須になりますね。

 

ーーなるほど。

 

矢吹 ちなみに、2回目のレコーディングではベースとドラムと一緒に録ったんですけど、2人の演奏にも自由度があるから、その方々がどういう演奏をされるか知ったうえで、僕もフレーズを事前に決め込まずに臨みました。相手がデモと違うアプローチしてきたのにこっちは決まったことだけやっていたら全然グルーヴしないわけで。そういった演奏はその場の判断じゃないとできないですよね。

 

ーードラムとベースとの演奏も、現場でどれだけ合わせてから収録するんですか?

 

矢吹 それも一度も合わせず一発で録りましたよね。

 

horita そうですね。それで「いける」と確信しました。そしてやれるメンバーならやりたいと思っていました。ファンクの醍醐味です。レコーディングを2日に分けたのも、初日の収録はピアノが土台となる楽曲を弾いていただいたんですが、2回目の収録では、セッションが必要になる曲を中心に録っていったんです。それもほぼほぼ一発録りで、どのテイクも素晴らしくて逆にどうしようってなりましたけどね(笑)。荒々しいところもあるんですけど、ミスではなく「味」に仕上がっているので。

 

ーーほかの楽器も含めて、自由度の高い演奏があったわけですね。

 

horita そうですね。それと、今回のテーマとして、登場キャラクターたちを意識した異なるバージョンを作りたかったという狙いがありました。例えば、「空色ユーティリティ」では、美波たちのほかにも、ご年配のゴルファーたちが登場しますが、同じ曲でも構成を変えることにより、それぞれのシーンに最適な楽曲に聴こえるようなアプローチに挑戦をしています。ぜひそういった部分にも注目しながら見ていただけると嬉しいです。

 

ーーたしかに本作の劇伴は同じ曲のバージョン違いが必ず存在していますが、そういう使い方があっての、違いなわけですね。

 

矢吹 そうですね。そういった部分はほぼアドリブで演奏しています。

 

horita 指が走るようなこちらも譜面で表現できないものをお願いしたのですが素晴らしい演奏をしていただき本当に感謝しています。走る旋律を楽譜で再現しきるカプースチンという作曲家も世の中にいるのですが、今回の意図はそれとは違うので。

 

矢吹 こちらこそ、素敵な機会をありがとうございました。ZENTAさんのスタジオで完成した音源を聴かせていただいたとき、レコーディングのときはあくまでイメージだったものが、しっかりと形になった感覚があり、とても感動しました。

 

ーーでは最後に、TVアニメ『空色ユーティリティ』を楽しんでいるみなさんに、改めて矢吹さんから本作の劇伴の聴きどころを教えてください。

 

矢吹 「空色ユーティリティ」は、そのときにしか出せない、生物としての音楽が映像とシンクロしている作品だと思っています。美波たちの青春のように、そこにしかない、その一瞬を収めた音楽を楽しんでもらえたらうれしいです。作品のサウンドトラックも発売が決定しているとのことでぜひチェックしていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

 

TEXT BY 澄川龍一

 


 

TVアニメ「空色ユーティリティ」楽曲 配信中

「空色ユーティリティ」キャラクターソング01

青羽美波(CV:高木美佑)「My treasure!」

Streaming & Download:https://lnk.to/my_treasure

 

「空色ユーティリティ」キャラクターソング02

茜遥(CV:天海由梨奈)「Play well!!!」

Streaming & Download:https://lnk.to/play_well

 

「空色ユーティリティ」キャラクターソング03

星美彩花(CV:後藤彩佐)「Have a good Game」

Streaming & Download:https://lnk.to/HaveagoodGame

 

「空色ユーティリティ」挿入歌

高橋洋樹「Zubatto☆ショット 首ったけ!!!」

Streaming & Download:https://lnk.to/Zubatto_Shot_Kubittake

 

商品情報

2025年2月19日(水)発売

「空色ユーティリティ」キャラクターソング・ミニアルバム

PCCG.02429 / 3,300円(税込)

*ご購入はこちら:https://lnk.to/sorairo_HAMCD

 

2025年3月26日(水)発売

「空色ユーティリティ」オリジナル・サウンドトラック

PCCG.02431 / 4,400円(税込)

*ご予約/ご購入はこちら:https://lnk.to/sorairo_OST

 

TVアニメ「空色ユーティリティ」作品情報

TOKYO MX、テレビ神奈川、MBS、BS朝日ほかにて放送中!

 

CAST

青羽美波:高木美佑

茜遥:天海由梨奈

星美彩花:後藤彩佐

秋名泉美:花守ゆみり

田所昌夫(マサ):井上和彦

田辺長介(チョウ):堀内賢雄

田中哲弘(テツ):森川智之

 

STAFF

監督・キャラクターデザイン:斉藤健吾

シリーズ構成:佐藤裕

脚本:佐藤裕・皐月彩・水月秋

原案協力:望公太

色彩設計:武田仁基

美術監督:工藤義隆

撮影監督:呉健弘

編集:重村建吾・佐藤彩香

音楽・音響監督:daisuke horita

音楽制作:Yostar Pictures Sounds・ZENTA STUDIO

アニメ制作:Yostar Pictures

 

INFORMATION

HP:https://anime-sorairo-utility.com/

X:https://twitter.com/@sorairo_utility

YouTube:https://www.youtube.com/@sorairo_utility 

Instagram:https://www.instagram.com/anime_sorairo_utility/ 

TikTok:https://www.tiktok.com/@sorairo_utility

©空色ユーティリティ

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