「ゴルフで見つける、私の”特別”」TVアニメ『空色ユーティリティ』が放送開始！音響監督・daisuke horitaとギタリスト・ZENTAによるインタビューが公開！

2025/1/16

TVアニメ「空色ユーティリティ」音楽対談第1回 daisuke horita × ZENTA

現在、放送中のTVアニメ『空色ユーティリティ』。その音楽の魅力に迫るべく、本作の音楽関係者たちによるインタビュー連載がスタート！　記念すべき第1回は本作の劇伴および音響監督を担当するdaisuke horitaと、ギタリストとして本作に参加するほかにミュージシャンのアサインからスタジオワークまで幅広く手がけるZENTAのふたりに話を聞いた。『空色ユーティリティ』の音楽世界はどのようにして作られていったのか、その魅力についてたっぷりと語ってもらった。

ーー『空色ユーティリティ』の音楽連載企画、記念すべき第1回は音楽担当のhoritaさんとZENTAさんにお話をお伺いします。まず、horitaさんの役割とZENTAさんが参加された経緯を教えて下さい。

daisuke horita　『空色ユーティリティ』で音楽を担当しています。劇中で使われるBGMを作るのが主な役割です。今回の劇伴はリッチなものを生音で構成したいと思っていたので、以前からお仕事をご一緒していて、僕の音作りの感覚などを理解してくださっているZENTAさんにお声がけしました。

ーーhoritaさんが劇伴を作るうえで、ZENTAさんの力が必要だったと。

horita　はい。なので『空色ユーティリティ』の短編アニメを作ったあとにTVシリーズの話が出てきたところで、ZENTAさんのところに相談へ行きました。自分が書いた曲に対して様々なミュージシャンを繋いでもらうだけでなく、音作りの面でも色々アドバイスを頂きまして。いわば僕とZENTAさんふたりでひとつみたいな役割になっています。

ーーZENTAさんとしても早い段階から『空色ユーティリティ』の企画に携わっていたわけですね。

ZENTA　そうですね、最初にお話をいただいたのがものすごい前で、それこそ「この企画はいつ始まるんだろう？」って思ってました（笑）。だからお話をいただいてから動き出すまでも結構時間があったんですよね。

horita　ZENTAさんもお忙しいので、早めに相談しないとほかの仕事で埋まっちゃうんですよ。

ーー最初のお話の段階で、ゴルフを題材としたアニメ作品であるというのは説明を受けたわけですか？

ZENTA　はい、horitaさんから色々と作品のことを伺いまして。あとその時点での設定も見せていただいたかな？まだ色のついていない映像も見せていただいて、いろいろと熱心に説明してくれました。

horita　すでに短編のパイロットフィルムはあったんですが、キャラクターの設定も少し変わっているんですよね。なので、そこからTVシリーズの概要と、資料を一通り見ていただいて、作りたい音楽のイメージをお伝えしました。

ーーその時点ではhoritaさんのなかで、劇伴のイメージというのはあらかた固まっていたんですか？

horita　そうですね。監督がどういう芝居を望んでいて、音楽として何が必要かということを拾ったうえでコンセプトを固めていくといったような流れでした。

ーーまた『空色ユーティリティ』としては、2021年に短編アニメが公開されていますが、そこでの音楽もTVシリーズに継承されているわけですか？

horita　もちろん意識はしているのですが、パイロットフィルムはショートアニメで、ゴルフ場での一日を切り取ったストーリーでした。その分、劇伴も「自然の爽快感」に振り切ったサウンドにしてあります。一方、今回のTVシリーズの場合は、登場人物が増え、日常シーンなども増えているので、ゴルフ場の透明感ある劇伴だけというわけにはいきません。そこも含めてのコンセプトや音楽ジャンル、楽器の選定をしていますので、そういった意味では全体的にパイロット版とニュアンスは変わったと思います。

ーーそうしたhoritaさんのコンセプトに、ZENTAさんが加わって、より詳細な楽器の編成などを考えていくという流れになるわけですか？

ZENTA　そうですね。ただ、horitaさんの持ってきたデモの段階で、曲ごとに使われている楽器は決まっていたんですよね。僕はそのデモをミュージシャンの生き生きとした演奏に差し替える作業が主になっていきます。horitaさんの作った曲やメロディーを飾ってくれる演奏家に入ってもらって、曲をブラッシュアップしていくイメージですね。

ーーそこは譜面通りというだけではなく、ミュージシャンによって変化するのでしょうか？

horita　そこも今回はしっかり出しておきたく。僕の方で作り込んだ状態でお渡しはするんですが、プレイに関してはミュージシャンのみなさんの持ち味を出して演奏いただきたいと。コード譜だけ書いてお渡しするとかではなく、ミュージシャンの方がデモを聴いたうえでどう解釈されて、演奏を一旦いただいてからすり合わせるという感じでしたね。

ーー『空色ユーティリティ』の劇伴はミュージシャンの生のプレイ、あるいはパッションもしっかり音にしたかったと。

horita　そうですね。今回のテーマの一つです。

ーーそうした『空色ユーティリティ』の劇伴を彩るミュージシャンたちについて、おふたりの印象をお伺いできればと思います。まずはピアノの矢吹卓さんについてはいかがですか？

ZENTA　矢吹さんはジャズとかフュージョンといったプレイがかなりうまい。そういうアプローチでのソロのライブをやっていたり、アルバムを何作も作られていたりするので、もう録音ボタンを押すたびに違う演奏してくれるぐらいアイディアを持っている方なんですね。それでこちら側が「こうしたい」って言ったらそっち側にも寄せてくれるし、矢吹さんはもう間違いないです。

horita　鼻歌を歌うように次々感覚で、鍵盤を走らせてくださるんですよね。それが本当に綺麗で。

ーーまさにジャズのようにアドリブを活かしたプレイをその場で出してくれるわけですね。

horita　そもそも劇伴のコンセプトを決める段階で『空色ユーティリティ』の題材がゴルフということもあり、アニメを楽しまれる方々とゴルフ好きの方々の橋渡しができるような音楽を目指したいなと思っていました。ボカロなどを好む若い方たちが好きなペンタトニックで構成しつつも、ご年配の方も懐かしいフュージョン、ビッグバンド、ハードロックなどの匂いを残したかった。そのためには即興でアイディアをだしてくださるミュージシャンの協力が必要だったんです。そういった希望をZENTAさんにお伝えし、矢吹さんやベースの大竹（紗英）さんをご紹介いただきました。曲によっては、70年代〜80年代の音づかいやジャンルを要素として採り入れていますので、ゴルフが好きな方にもどこか懐かしさを感じていただけるのではないかなと思っています。

ーーなるほど。

horita　大竹さんをご紹介いただいたときに何曲か音源をいただいたのですが、ロックやポップスはおさえつつ、ルーツがファンクからこられているのでとにかく渋いんですよね。そんなベースに対して、ドラムは様々なジャンルに対応いただける、遠藤（勝彦）さんにご相談しています。ぜひ2人の演奏にも注目していただきたいです。セッションもバッチバチでしたね。

ーー今回、ZENTAさんはギタリストとしても参加されていますね。

horita　ZENTAさんのアコースティックギター、すごく沁みますよね。作品の感情的な要素をギターで演出してくださるんです。今回の劇伴はZENTAさんのアコースティックギター無しでは成立しないと思っています。やわらかい人柄が弦にちゃんと乗るんですよ。

ZENTA　ありがとうございます（笑）。

ーーそうした腕利きのプレイヤーたちが集まった『空色ユーティリティ』の劇伴ですが、そうしたミュージシャンたちのレコーディングはいかがでしたか？

horita　本当に素晴らしかったですね。例えばストリングスの皆さんでいうと、クラシックをしっかりやられてるので、丁寧な音も一発でいただけますし。ドラムやベース、ピアノのスリーピースになると遊び心もすごくて。「あ、ここはこう来たか」とか感じることがたくさんあって楽しかったです。収録は全てZENTAさんにセッティングをしてもらいました。

ZENTA　マイクのセッティングから全てやっています。

horita　僕と同じ感覚を持ってくださるZENTAさんがエンジニアまでやってくれるので、俯瞰的に聴きながらディレクションできたのはすごくありがたかったです。

ZENTA　どのミュージシャンも素晴らしかったですね。

horita　今回、遠藤さんや矢吹さんとは初めてご一緒したのですが、実際に録り始めてみたらすごいスピード感で、すぐに「ハマった！」と確信がありました。そのまま「どんどん次に行きましょう！」と進めたら初日だけですごい曲数を録ることができました（笑）。

ZENTA　一日にあれだけの曲を録るのはなかなか無いですよ（笑）。

ーーあと今回劇伴を聴かせていただいて思ったのは、ひとつの楽曲に対して編成が異なるバージョン違いが存在しますよね。いわばひとつのモチーフに対して2曲存在するというものですが、これは劇伴でも珍しいことなのかなと。

horita　1曲でふたつのバージョンを作ろうというアイディアは最初からありました。アニメの劇伴では珍しいかもしれないんですけど、例えばおじいちゃんたちのテーマソング的に、バンドセットのものにサクソフォンとトロンボーンとトランペットを出してビッグバンドっぽく展開した曲があったとして、そこに管を抜いてピアノを立たせてあげる環境を整えるだけでも、同じ曲でもちょっと柔らかい曲になるんですよね。そうなると女の子たちのシーンにも当てはまってくるんですよ。同じ楽曲でも聴かせ方を変えることで、それぞれ別のシーンに当てはめることができるようになるんです。

ーーなるほど、そこは音響監督も兼ねているhoritaさんからすれば、シーンに対応する劇伴が増えるということになりますよね。

horita　そうですね。ただ笑ってるにしても、すごい笑ってるのか、ちょっと笑ってるのか、なぜ笑っているのか、前後のカットはどうなっているのかによってニュアンスが変わってくるんですよ。そういうときにバージョンの違う楽曲があると、バリエーションが広がるわけです。

ーーより微細にシーンに対応できた楽曲を用意できると。

horita　アニメの劇伴では、ステムデータといって楽器別のトラックが存在していて、シーンに応じて一部のトラックを抜いたりしてバランスの調節をしたりするんですが、シーンによって旋律を変えたいと思うときもあって。今回のレコーディングではミュージシャンの皆さんにお願いして違うバージョンでも録らせていただきました。

ZENTA　特にピアノやサックスは多かったですね。別のソロを弾いてもらってバージョンを変えたり。これはhoritaさんが劇伴と音響監督を兼ねているからできることで。さきほど話に出たステムデータを使った音響処理って、シーンによってはリズムだけとかベースだけ、あるいは管楽器だけを使うシーンもあるんです。それって、ものによっては作曲家の意図していない形で使われることもあるんです。今回はhoritaさんが音響監督と作曲家を兼ねているので作家と現場の齟齬がない状態で進めていけるのがいいですよね。

horita　そうですね。今回のレコーディングはすべてZENTAさんのスタジオで行っているのですが、僕とZENTAさんの2人で完結できる環境だったことも良かったです。大きい環境だとどうしても伝達のフィルターがどんどんかかってしまいます。それは仕方のないことではあるんですけど、伝言ゲームは少なければ少ないほど純度が高いし、時間も予算も抑えながらボリュームが出せるんです。だから1クールでもこれだけの曲数をリッチに作ることができたと思っています。一緒に最後まで付き合ってくれたZENTAさんには本当に感謝しています。

ZENTA　こちらこそです。いつもやりやすい環境を整えていただいて本当にありがたいです。

ーーでは最後に、いよいよ放送がスタートした『空色ユーティリティ』の今後を楽しみにしているみなさんに、horitaさんからひとことお願いいたします。

horita　『空色ユーティリティ』はゴルフが題材の作品ではありますが、ゴルフのすばらしさに加えて、キャラクターの生き生きとした日常のお芝居を援護できるように、音楽も非常に気合を入れて作っています。まずは、キャストの皆さんのお芝居を純粋に楽しんでいただきつつ、その添え物として僕達の音楽にもご注目いただけるとうれしいです。これからどんどん面白くなりますのでご期待ください！

TEXT BY 澄川龍一

TVアニメ「空色ユーティリティ」音楽商品情報

2025/02/19 発売

「空色ユーティリティ」キャラクターソング・ミニアルバム

https://canime.jp/product/PCCG000002429

2025/03/26 発売

「空色ユーティリティ」オリジナル・サウンドトラック

https://canime.jp/product/PCCG000002431

TVアニメ「空色ユーティリティ」作品情報

2025年1月3日よりTOKYO MX、テレビ神奈川、MBS、BS朝日ほかにて放送中！

CAST

青羽美波：高木美佑