【インタビュー】映画『夏へのトンネル、さよならの出口』、国内外の映画祭にて上映&受賞の快挙!世界を股にかける海外戦略を担当者に直撃!!

2023/9/22

ポニーキャニオンの自社企画・製作・配給で2022年夏に公開された映画『夏へのトンネル、さよならの出口』。日本国内だけなく海外でも公開され、6月にはフランスの『アヌシー国際アニメーション映画祭』にて“ポール・グリモー賞”を受賞しました。そんな快挙を成し遂げた本作の軌跡を、企画プロデューサーの小山直紀、海外宣伝チームの蕎麦谷卓馬に語ってもらいました!今後もさらなる海外展開を予定している“夏トン”から目が離せません!!

 

——まずは、本作におけるお二人の役割をお聞きしたいのですが。

小山 アニメ・映像事業本部 アニメプロデュース部1部の小山です。本作の企画・プロデュースを担当しています。具体的には、本作の企画立案からはじまり、スタッフィングやキャスティング、国内興行や海外展開などのビジネスプランニング、劇伴や主題歌といった音楽全体のコーディネイトなど、作品のすべてに関わりました。

蕎麦谷 アニメ・映像マーケティング本部 アニメ・映像メディアマーケティング部 海外グループの蕎麦谷です。主に劇場アニメの海外セールスを担当しています。あとは、海外映画祭のブッキングなども行っています。『アヌシー国際アニメーション映画祭』には田口智久監督のアテンドのため現地同行しました。

——その『アヌシー国際アニメーション映画祭』にて本作が“ポール・グリモー賞”を受賞されました。今のお気持ちはいかがですか?

小山 当初から映画作品として、国や地域を選ばない長く愛される作品を目指していました。エンターテイメントとしても成立するものであり、映画好きの方が観てもはっとした印象を与えられる作品になればと考えていたので、こういった形で評価いただけたことは大変嬉しいです。

蕎麦谷 やはり作品のクオリティが素晴らしいので、海外での劇場公開も軒並み成功していて。アヌシーを始め他の映画祭でも受賞をする中、海外の方からとても良い反応がもらえていますし、携われて光栄です。

 

——そもそも海外の映画祭に向けてアプローチを行った経緯を聞かせてください。

小山 やはり世界的に観てもらえる作品にしたいという想いで作っていたので、公開にあたり蕎麦谷さん含め海外グループのみなさんに「海外の映画祭へ積極的にエントリーをお願いします!」とお伝えしていました。

蕎麦谷 映画祭にかけるには、クオリティはもちろんアーティスティックな面も必要なんです。本作はその両方を兼ね備えているということで、海外グループとしてもどんどんアプローチしていくことになりました。

——特に海外でのヒットにつながると思ったところは?

蕎麦谷 海外はやはり言葉や文化が違うため、テーマは普遍的なものであることが必要で。どこの国の誰にでも共通するような、夢に対する悩みやもう手に入らないものがテーマだったことがひとつ。ふたつめは、画の美しさや音楽の素晴らしさが国境を越えて受け入れられたと思います。

小山 僕は原作を最初に読んだときに、時代も年齢も性別も問わない普遍的なテーマだなと思いました。世界が滅亡するとか大事件が起きるわけではありませんが、主人公の塔野カオルと花城あんずのパーソナルな心の重なり合いやお互いを支え合う姿が、今の生きづらい世の中に響くんじゃないかと。また、劇中のトンネルに入ると外の世界と断絶されるというのは、おそらく神話などをモチーフに原作の八目迷さんが書かれているのかなと思います。昔から世界各所で行われていたお話づくりとの共通点も、地域を問わず受け入れやすかった理由かもしれません。

——そして、本作はテレビアニメからの映画化ではなく、劇場ストレートアニメとして展開されていますが、その理由は?

小山 もともと会社に入社した理由が“何年経っても楽しむことのできる、一本で完結する映画を作りたい”だったからです。当時の上司と企画会議をしたところ、「この原作とスタッフだったら絶対にチャンレジしたほうがいい」と後押しをしてもらえて。企画を通してくれた会社にも感謝しています。

——小山さんの熱意が伝わったんですね。

小山 ただ、劇場ストレートアニメは、非常にビジネスハードルが高くて。それでも良い作品を世に出していくためには、ビジネスとしても形にして生き残っていかなくてはいけません。その方法のひとつとして、映画祭などで作品の名を残すことで、IPとしての寿命を伸ばしていけたらと思い、海外へのアプローチを考えました。現在は、サブスクリプションや動画サイトなどで、映像や音楽に触れてもらえさえすれば、関係各者の収入になる仕組みが出来上がっているので。

——海外での公開は日本公開と同時に動いていたんですか。

蕎麦谷 そうです、海外は台湾を皮切りにアジア圏からスタートしました。なので、『富川アニメーション国際映画祭』での上映は早めに決まっていて。欧米は、アヌシーの映画祭の開催に合わせて公開されました。

——アジア圏の担当ということで、各地の反応はどうでしたか?

蕎麦谷 すごく良かったです、現地の配給会社も満足のいく成績を残せるくらいヒットしました。さらに映画祭に上映できただけでなく、受賞した素晴らしい作品です。世界的にコアなアニメファンだけなく、ライト層の方たちにも楽しんでいただけて、ポニーキャニオンにあまりなかったタイプの作品だと思います。デートムービーにもピッタリかと(笑)。

小山 デートムービーとして楽しんでもらうことも、僕の中で望んでいた理想の形のひとつです(笑)。

蕎麦谷 ストーリーもそうですけど、画の美しさもポイントだと思います。なので、アートワークや予告編を中心に観に行きたいと感じてもらえたのかと。現地の会社とタッグを組むことでうまく展開できました。

小山 日本同様に現地でも入場特典がヒキになるとご提案いただけたり、積極的なライセンシーさんの姿勢はありがたかったですね。

 

——本作の主題歌はeillさんの「フィナーレ。」。海外でもとても聴かれているそうで、映画祭受賞の影響以外に何が海外ユーザーに刺さったと思いますか。

小山 本編映像を使用したミュージックビデオの役割が大きかったと思います。歌詞を多言語で掲載していて、ただ翻訳しているわけでなく、eillさんご本人が監修しているのもポイントかと。実際にコメント欄はいろいろな言語で書き込まれていますし、そもそも作品に寄り添った楽曲を書いていただけたからだと思います。

——ちなみに、eillさんが主題歌を担当された経緯というのは。

小山 企画していた2019年当時は、社内外問わずいわゆるネット発アーティストを想定していたんです。だけど、制作が進んでいくにつれ、ソリッドな本編のように少ない音数でも表現をすることができ、花城あんずのように創作の苦悩もわかる(自身で詞曲を書く)シンガーソングライターがいいんじゃないかと思いはじめて。さらに、作品舞台の2005年に合うジャンルと考えたらR&Bがいいのではと思いました。そんなときに、当社からeillさんがデビューするということで「片っぽ」という曲を聴いてみたら、そのまま主題歌にできるくらいマッチしていて驚きました。“この人しかいない”と感じてお願いしました。

——そういった出会いだったんですね!

小山 田口監督にも「片っぽ」を聴いてもらい、「ぜひお願いします」とお返事いただきました。それで彼女に映画の制作資料や曲のイメージを伝えて上がってきた「フィナーレ。」は、想像のひと回り、ふた回りも上をいくような曲で本当にありがたかったです。当初は主題歌だけの予定でしたが、作品とのマッチングがとても良かったので、挿入歌「プレロマンス」を制作いただいたり、最終的には「片っぽ」も含め、3曲も使用させてもらいました。

蕎麦谷 『富川アニメーション国際映画祭』での受賞理由のひとつに、音楽が素晴らしいことという話も聞いたので、まさにハマっていたんでしょうね。

 

——アニメーション制作はCLAPさんが担当ですが、こちらも小山さんのアイディアですか。

小山 CLAPさんは、プロデュース会社のARCHさんにアテンドしていただきました。そのときに、松尾亮一郎プロデューサーにもお会いしたのですが、松尾さんは、映画『この世界の片隅に』『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』『マイマイ新子と千年の魔法』など、独自の世界観を持ったアニメーション映画を制作されてこられた方なので、絶対にいい映画にしていただけると思い、お願いしました。

——映像面での見どころは。

小山 田口監督の演出やコンテを実現した制作スタッフのみなさんの技術と努力が本当に素晴らしくて。本作は一見すると派手ではないのですが、かなり難易度の高いことを行っています。例えば、リムライトと呼ばれる反射光の入れ方です。今回は環境に合わせた反射光を取り入れていて、ウラシマトンネルや水族館のシーンはわかりやすいと思いますので、ぜひチェックしてみてください。また、ウラシマトンネル内の作画と3Dを合わせた表現も見事でした。チャレンジングな表現をしている点も、映画祭に来られた方に、“おもしろいことをやっている作品だな”と思ってもらえたのかもしれません。

蕎麦谷 アヌシーには、アニメ業界の方がたくさん参加しているし、観客もアニメーターを目指している方も多くて玄人目線なんです。なので、技術的なところは評価基準のひとつとして大きく占めていたでしょうね。

 

——そういうエピソードを聞くとまた観たくなってしまいます。

蕎麦谷 来場者は普段上映後すぐに席を離れてしまうんですけど、みなさんその場で拍手をしてくれていました。授章式では、該当の賞の発表が最後のほうだったので、田口監督含めみんなずっと緊張していて。作品の名前を呼ばれたときもみんな一瞬“えっ!”ってなっていました(笑)。

小山 僕もその場にいたかったです。アヌシーの長編部門で日本の作品が受賞するのは6年ぶりなので本当に光栄なことなんです。

——7月には、アメリカで開催された『Otakon2023』にて上映やトークショーも行なわれました。

小山 本年の『Otakon』は駅・電車をテーマにした開催とのことで、本作も駅が重要な場所として登場することから、ぜひお越しくださいとご招待いただきました。原作者である八目迷先生、音楽をご担当いただいた富貴晴美さん、設定制作をいただいたCLAPの西川真剛さんとともに、北米でのプレミア上映やパネル、サイン会を行いました。北米のみなさんは声を出して笑って、泣いて、時には歓声を上げながら鑑賞いただいて、こんなにもまっすぐに楽しんでもらえるのは作品にとって幸せなことだなと感じました。

 

蕎麦谷 海外は、9月14日から韓国での上映が始まり、以降はフランスやドイツなどでの展開も予定しています。さらに『台中国際アニメーション映画祭』での上映も決まりました。今後も各地の映画祭に選考してもらえるようにも調整しているので、これからも楽しみです。

小山 国内では、映画館での再上映を随時検討中です。また、9月29日からAmazon Prime Videoでの見放題独占配信が始まります。公開1周年の同月9日から制作スタジオであるCLAPさんからメイキングブックの通販も始まりましたので、ぜひチェックしてみてください。

——公開から1年経ってもそのような展開ができる作品はそうそうないですよね。では、最後に本作の魅力を改めて小山さんにお聞きしたいのですが。

小山 エンタメとして予備知識が必要なく観ることができる作品なので、ぜひ気軽に観てください。それでいて、奥深い演出や技術で描かれているので何度でも楽しめると思います。セリフで語らず、画で語っているようなシーンも多いので、そこの感じ取り方が観た方独自の感想になるのではと思っています。ぜひSNSなどを通して作品の感想を聞かせてもらえると嬉しいです。

 

【作品情報】

映画『夏へのトンネル、さよならの出口』

 

【特報映像】

【本予告映像】

【予告映像第2弾】

■ストーリー

ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。ただし、それと引き換えに…。

掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、

芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。

ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。

これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語―。

 

■キャスト

鈴鹿央士 (塔野カオル 役)

飯豊まりえ (花城あんず 役)

畠中 祐 (加賀翔平 役)

小宮有紗 (川崎小春 役)

照井春佳 (浜本先生 役)

小山力也 (カオルの父 役)

小林星蘭 (塔野カレン 役)

 

■原作

原作:八目 迷「夏へのトンネル、さよならの出口」(小学館「ガガガ文庫」刊)

キャラクター原案・原作イラスト:くっか

 

■スタッフ

監督・脚本:田口智久

キャラクターデザイン・総作画監督:矢吹智美

作画監督:立川聖治 矢吹智美 長谷川亨雄 加藤やすひさ

プロップデザイン:稲留和美

演出:三宅寛治

色彩設計:合田沙織

美術設定:綱頭瑛子 (草薙)

美術ボード:栗林大貴 (草薙)

美術監督:畠山佑貴 (草薙)

撮影監督:星名 工

CG監督:さいとうつかさ (チップチューン)

編集:三嶋章紀

音楽:富貴晴美

音響監督:飯田里樹

制作プロデューサー:松尾亮一郎

アニメーション制作:CLAP

主題歌・挿入歌:「フィナーレ。」「プレロマンス」 eill

配給:ポニーキャニオン

製作:映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

 

公式サイト:natsuton.com  

公式twitter:@natsuton_anime

 

©2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

 

■Blu-ray情報

発売中

Blu-ray豪華版

PCXG.50809 ¥10,780(税込)

 

Blu-ray通常版

PCXG.50810 ¥6,380(税込)

 

Blu-rayきゃにめ特装版

SCXGー00252 12,980円(税込)

≫きゃにめ特設サイト

 

■発売・販売元

ポニーキャニオン

 

■インフォメーション

HP:https://natsuton.com/

Twitter:https://twitter.com/natsuton_anime

 

©2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

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