HOWL BE QUIET「ラブフェチ」なぜヒット?TikTok発、SNSで広がる若者支持の理由を徹底解剖!!
HOWL BE QUIET(以下:ハウル)の「ラブフェチ」が、いま、10代を中心とした若者の間で、話題になっている。同曲は、3年前の2017年5月24日にリリースしたメジャー1stフルアルバム『Mr.HOLIC』の1曲目。2020年1月下旬ごろから、約15~60秒の編集動画をシェアできるTikTokで、2番冒頭の〈歴代の元カレたちよ…〉からサビ直前の〈…謝ってくれよ〉というフレーズまでを切り取って、自身のパートナーを紹介する“カップル動画”が投稿されるようになったことが、ラブフェチヒットに火をつけた。女子ユーザーは元カレを元カノと変え、ハッシュタグ「#歴代の元カノ達よ」をつけて投稿。2月5日には、YouTubeのオフィシャルアカウントで「ラブフェチ[Official Audio]」を公開し数十万人を超えるフォロワーを抱える人気TikTokerによる振付や、人気カップルTikTokerからの投稿が急増した。メインユーザーが10代の若者であるTikTokと親和性のあるLINE MUSIC、また、Apple Musicのランキングにもチャートインしてからは、LINE MUSICが開催した春のBGM祭「#推しLINEBGM」キャンペーンでは堂々の2位を獲得。Apple Musicのトレンド検索でもラブフェチがヒットするなど、1月下旬から、2か月経つ現在も、ますます、その勢いは止まりそうにない。そして、ハッシュタグ「#ラブフェチ」TikTok内総再生回数は先日600万回を更新。本稿では、「ラブフェチ」の作詞作曲者である竹縄航太(Vo / Gt / Piano)へのメールインタビューを交えながら、「ラブフェチ」を徹底解剖する。
“恋愛”をモチーフにした楽曲で構成した『Mr.HOLIC』のなかでも、純度100%の自身の実体験を盛り込んだ「ラブフェチ」が生まれた瞬間、竹縄は、とんでもないメロディーが出来てしまったと確信したという。一方で、嫉妬心満載で見る角度によっては痛い歌詞なだけに、スタッフの口から零れたのは、「竹縄っぽさが出てて良い!」「流石にこれを男が歌うのは痛いんじゃないか?」といった賛否両論の意見。「ラブフェチ」は自信と不安が混合した曲だった。最終的には、嫉妬心の強い自身の恋愛経験を曝け出すことを選んだうえで、落ちサビには、少し気を遣い、〈痛いやつで/本当にごめんね〉と付け加えた。
彼女への“偏愛”をテーマに、1番や2番で元カレや他の男性を妬む心を描いた「ラブフェチ」は、嘘偽りなく、本音にどこまでも忠実な楽曲だ。TikTokのメインユーザーである10代は、それこそ、思春期真っ盛りで多感な年代。カップル自慢をする動画を投稿するのは、お互いの好きな気持ちを伝えたいからこその行動。普通に好きと綴られた歌詞よりも、ひねくれながらも人間味もある歌詞のほうが、相手への本気度を伝えやすいから、「ラブフェチ」を使用するユーザーが急増したのではないだろうか。切り取られる2番のうち、本気度をうかがわせるフレーズは、〈歴代の元カレたちよ/あの子と出会うのが少し/早かったぐらいで結局は/今 一緒にいるのは僕ですよ〉〈そして無駄に歴史に残ったこと/謝ってくれよ〉。「ラブフェチ」を好むリスナーは、竹縄と同様に思いに忠実だ。
「音楽的に4つ打ちの小気味いいリズム感、EDM的要素を感じられるバンドサウンドなど、TikTokでバズっている曲との共通項も勿論あると思いますし、TikTokユーザーならではの切り取り方をしてくれた歌詞の部分かなと分析しています」「〈歴代の元カレたちよ〉このフレーズは元カレからしたら、どこの馬の骨ともわからないやつだし、どう足掻いても相手にされない負け犬の遠吠えみたいなところもありますが、そう啖呵を切りたくなるくらい、今の彼女を想っていることが、この一言でわかるなと」
ひねくれているがどこまでも人間味のある歌詞から、TikTokカップルに支持されている「ラブフェチ」。もちろん、カップルに限ることなく、同曲は、至るリスナーに聴かれている。一般的に、TikTokのBGMとして流行する楽曲は、リズムが良く、ノリやすい曲調であることが多い。「ラブフェチ」が、歌いたくなる曲として使用されたのは、規則的に踏む4つ打ちが印象的であり、BPMがテクノやトランスではよくある140程度で展開されていることが、大きく影響しているのだろう。現にTikTok内では〈歴代の元カノ達よ〉から始まる替え歌として弾き語りの投稿も目立ち始めており、表現する音楽としても楽しまれている。
2月5日に、YouTubeのオフィシャルアカウントで公開した「ラブフェチ[Official Audio]」は、現在、72万回再生(4月14日付)を突破。再生回数は、ここ何年かの中でも一番の勢いで伸びている。コメント欄で最も目に付くのは、「これくらい人に愛されたいな」「この男の人は優しい」「共感する」という竹縄の恋愛経験を肯定するコメント以上に、TikTok経由でハウルを知ったリスナーに対して、元からのファンがお勧めの曲を紹介するやりとり。そこからは、確かな感謝が生まれるとともに、実際にハウルのファンとなるユーザーが増えていることがわかる。
新たなファンが増える背景には、ハウルの音楽、彼ら自身を愛するファンの存在がある。彼らが居ても、温かいファンが居なければ、彼らの楽曲がここまで知られることはない。そして、そのファンを作り出しているのも、ハウルの音楽。いまとなれば、「ラブフェチ」は、そんな当たり前のことを改めて、感じさせてくれた、きっかけの曲ともいえる。
「TikTokに限らず、現代は個人が好きなように発信出来る発信文化だと思います。TikTokというツールを見ると、10代の中での表現方法の一つとして、TikTokが選ばれているのだと思いました」
TikTokの動画を撮影するのに必要なのは、カップル同士、友人同士など、あらゆる個性が集まったうえで、振付系からスポーツ系などあらゆるシチュエーションを用意すること。そのシチュエーションの数が豊富であればあるほどに、楽曲への使用も比例して大きな広がりを見せる。いわば、TikTokを中心とした世の二次創作は、若者の自由な発想なしでは成り立たない。「ラブフェチ」の浸透した数は、それだけ、若者の発想が柔軟になってきていることの証拠でもある。
ここで、「TikTokの層に対しても、しっかり自身の楽曲を発信していこうと考えて、TikTokでオフィシャルアカウントを作りました」と語る竹縄。TikTokから派生した「ラブフェチ」のヒットを受けて、竹縄自身の心境の変化が、さらなる楽曲作りへ早くも生かされようとしている。「ラブフェチ」のヒットがなければ、新たな戦略へと結びついていなかったはずだ。いまの10代が求める愛の形にマッチした人間味ある歌詞、J-POPを意識した遜色ないメロディー、温かみのあるファンを作り出すハウルの音楽……これらの要因が重なり、「ラブフェチ」は、愛されている。
いま、誰にどんなメッセージを伝えたいかとの質問に、竹縄はこう答えてくれた。
「3年前の自分に『不安で不安で仕方なくて、夜も眠れない日もあるだろうけど、信じられないことにお前が書いた、しかもとびっきり偏愛のやつが、色んな人に聴いてもらえることになるぞ、だから音楽はやめるなよ』と言いたいですね」
3年前の楽曲が、いま大きな広がりを見せ、ハウルを照らしているのは、彼らが、どんなときでも、自身の思いに忠実に、ゆっくりだとしても確実に、一歩ずつ、前進し続けたことへのひとつの報いといえる。
(文=小町碧音)
【小町碧音 プロフィール】
1991年生まれのボカロ、歌い手界隈を中心に手がける音楽メインのフリーライター。音楽が好きです。『Real Sound』『FanplusMusic』『OKMusic』『rockin’on.com』などに寄稿。
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【HOWL BE QUIET – ラブフェチ[Official Audio]】
【HOWL BE QUIETオフィシャルWEBサイト】
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