【インタビュー】アニメ『SSSS.DYNAZENON』のヒロイン・南 夢芽の描き下ろしイラストをスケールフィギュア化!数々の技巧とチーム力で唯一無二のフィギュアを完成させたファット・カンパニーを直撃!!

2021/7/6

ポニーキャニオン初のスケールフィギュア商品、アニメ『SSSS.DYNAZENON』のヒロイン・南 夢芽の1/6スケールフィギュアが2021年7月14日まで受注中。そんな本商品を制作したのは、フィギュアメーカーのファット・カンパニー。代表して、総合プロデューサー・高山英樹、原型師・ムタ両氏に話を聞きました。目の肥えたファンたちの期待に応えるべく、ポージング、彩色などに技巧を凝らし続けた制作の日々について迫ります!

 

造形は自分の作品を作る感覚ではない!ユーザーが求めているものにどれだけ近づけられるかが目標!!

——まず、高山さんは総合プロデューサーとして本商品に携わったとのことですが。

高山 そうですね、プラスで現場監督みたいな立ち位置でも関わりました。俯瞰で全体の進行を見て指示を出したり、状況によってはパーツ単位で細かなディティールなども見ます。僕自身、5年前までは彩色(塗装)をメインに原型のフォローアップもしていました。

——そういう経験則を元に現場を見られているんですね。ムタさんは原型師の活動はどのくらいになるのでしょうか?

ムタ ファット・カンパニーに入社して3年になります。それ以前は個人で活動していました。商業フィギュアとしては10作品くらいを手掛けています。

——なるほど。では、本題に入っていきますが、まず今回ポニーキャニオンからフィギュア制作の依頼をされたときの率直な感想は?

高山 僕の世代的にはレコード会社のイメージですが、ここ数年いろいろなアニメ作品に携わっている印象もありますね。記憶として幼少の頃より馴染みのある会社とお仕事が出来る、というのも不思議な感じでした。

ムタ 自分も音楽のイメージでしたけど、最近映画館などで作品クレジットを見ていて、“あっ、この作品もポニーキャニオンさんなんだ”と思うことが多々ありました。『SSSS.GRIDMAN』も放送中に楽しく視聴させて頂いた作品でしたので、今回の依頼の件について知ったとき、いちファンとしてとても光栄で嬉しく思いました。

 

——『SSSS.DYNAZENON』という作品に関しての印象というのは?

ムタ 『SSSS.GRIDMAN』でも感じられた少年少女たちのリアルな掛け合いや空気感がすごく好きで。回を重ねるごとにキャラクターの魅力に気付かされますよね。

——制作にあたっては、ムタさんを中心としたチームで取り組まれたとお聞きしたのですが。

高山 夢芽のフィギュアの構図は、浮遊しているように見せることがポイントなのですが、量産の観点から開発途中にトライアンドエラーが頻発する状況が予測できたんです。その場合、アナログ原型だとやり直しに時間がかかるので、効率の良いデジタル原型が必然となり、当社に3人いる原型師の中でデジタル担当であるムタを選抜し、そこにアナログ原型師のふたりがフォローアップするという布陣を立てました。

——ちなみに、デジタルでの作業というのは?

ムタ パソコン上でデザインをして、3Dプリンターで出力していくという作業です。すごくざっくりとした説明になってしまうのですが、使う道具や手段が異なるだけで、手で行う作業が画面の中へ置き換わっただけです。最後の磨き前までの行程をデジタルで行う、という作業になります。

高山 パソコン上ではあくまで2次元でしかないので、出力して立体物として見たときに2次元からの変換による齟齬が少ない人ほど上手いというか。ただ、どうしてもデータそのまんまとはならないので、そういった場合にはアナログによる手作業で理想のラインに近付けるべく調整をかけていきます。

——両者の手法を活かして完成に近づくんですね。

高山 出力をした後は表面が粗いのでヤスリをかけて整えていきますが、そのときに潰れたモールドや甘くなっているところも彫り直していきます。そういう場面でもアナログの技術が必要不可欠なんです。

——ムタさんは元々アナログ作業もされていたのですか?

ムタ はい、そんな長い期間ではないのですが。

 

——今回、浮遊感のあるポージングをした描き下ろしイラストをフィギュア化されましたが、技術的な面でハードルは高かったのでしょうか。

高山 まさに、浮遊感を構図的にどう表現するのか、またそれに伴う量産への懸念があり、辻褄合わせをしながらの進行となるので、正直難易度が高い案件だと思いました。ムタを中心とした原型チームと製造担当など他部署と何度もすり合わせを行い、懸念点をひとつずつ潰しながら進めていきましたね。

ムタ 浮遊感を出すための支えがしっかりとした軸でないと商品になったときに垂れてきてしまうので、どのくらいの太さの軸であれば耐えられるのかを綿密に打ち合わせしました。

高山 海外で量産して日本に輸送する際、移動コンテナ内の温度が60℃に達することもあり、PVCが変形する恐れがあるため鉄芯を入れるといった対策も施されたりします。また、手法としてよくある「氷」と呼ばれる透明なクリアパーツで本体を支えるという案も当然出ましたが、ポニーキャニオンさんの本商品に懸ける強いこだわりがあり、なんとか実現出来ないかと社内で検証を重ね、今の形に仕上げることが出来ました。そのおかげで他メーカーさんから見ても、“どうやって支えているんだろう?”と驚くような仕上がりになっていると思います。

——ファットさんの技術力の賜物ですね。

高山 この経験が活かされ、のちのスタンダードになれば、フィギュア市場の表現の幅やクオリティ底上げにも繋がりますしね。

——では、描き下ろしイラストを基に制作はどのように進行したのでしょうか。

ムタ 夢芽の大まかなポージングをパソコン上で制作して、コックピットやリュックの設定資料を照らし合わせつつ、再現していきました。8割程度進んだら出力して、細かい部分を詰めながら社内の制作部と打ち合わせをして、修正と出力を何度か繰り返しました。

高山 社内の結束はもちろん、TRIGGERさん、円谷プロさんにはこの上なくご協力いただけたので、とてもスピーディーに開発進行することが出来ました。

ムタ 自分の作品を作るという感覚ではなくて、ユーザーさんが求めているキャラクターにどれだけ近付けられるかが目標なので、修正の戻しが早いぶん作業に集中できました。

 

——では、本商品の魅力、こだわったポイントはどのあたりでしょうか。

ムタ まず夢芽の髪型です。ふわっとした感じを再現しつつ、量産しやすい形状にすることにすごく気を遣いました。あと、先ほどもありましたが、夢芽を支える棒を見えないように、服で上手く調整するっていうのが大変でした。他には、キャラクター設定で“爪の印象”への言及があったので、爪ですね。ただ、フィギュアになると爪はかなり小さいので、手の表現を女の子らしくすることによって、爪にも注目してもらえればなと思いながら作りました。

——やはり浮遊感はかなりこだわられたんですね。

ムタ 一番の見せ場なので(笑)。商品画像の公開後に、SNSで見てくださったみなさんのコメントで「どこで支えているんだ!?」というのを見て、したり顔をしちゃいましたよ(笑)。今回の商品は、1/6のスケールなので、そのスケールに見合うような情報量が必要だと思い、例えば制服の縫い目や裏面がサテン生地の質感に見えるようなシワを入れたりとかもしました。そこまで見る方がいるかわかりませんが(笑)。

——今のユーザーは見ていますよ。そのこだわりが商品の完成度を高めて、ユーザーからの信頼も得られるんだと思います。

ムタ そういっていただけるとありがたいです。

 

彩色職人のセンスが問われる!?フィギュアの命と言える“顔”と“目”へのこだわり!

——彩色に関しては、高山さんが監修されたそうで。

高山 実際の彩色は、緋色(scarlet)さんに担当していただきました。イラストの色をただ単に再現するだけでなく、立体的に落とし込んだときにどう魅せるか、というポイントがありまして。そこをしっかり把握された上で彩色されているな、という印象を受けました。特に髪の頭頂部から始まるピンクのグラデーションは、塗料をできる限り希釈して粒子の細かい状態でスプレーワークをすることで、あのような滑らかなグラデーションとなります。そこには、高い技術とセンスが必要です。見事に再現されていました。

——本当に髪の色味が綺麗ですよね。

高山 あと、フィギュアの出来を左右する要素である“顔”のさらに大事な“目”についても、今回の夢芽は情報量が多く細かくて難易度が高いのですが、アウトラインはもちろん、細部までしっかりと描き込まれていて非常に精度の高い仕上がりでした。お客さんはフィギュアを見るとき、まず顔、次いで目を見るんです。そこで、“違うな”と少しでも違和感を感じてしまったら、全体の出来がいくら良くてもそれ以上見てくれないんですよね。しかも、一瞬で判断されますから。それだけにとても重要なポイントなんです。

——まずは顔に着目されるんですね。

高山 そうなんです。なので、顔や目だけ塗ってもらえないかとピンポイントでお仕事の依頼がある方もいるくらい。当の緋色さんにもそういう依頼があるそうで。今回、夢芽の描き込みを見て、相当な手練れの職人さんだなと思いました。写真では伝わりにくいかもしれませんが、デカール印刷みたいに綺麗でフラットな仕上がりなんですよね。目を印刷して貼りつけた物は、形が整えやすい反面、よく見るとドットが見えてしまいます。例えば、告知用の大型ポスターとかを作る際には顕著です。手描きのほうがレタッチするデザイナーさんからは「やりやすい」と言われたりもします。

——ムタさんは、彩色の仕上がりを見たときどんな感想でしたか?

ムタ 夢芽の髪の色味は特徴的、かつ合わせにくい色合いなのに良いバランスで仕上げてくださって素晴らしいなと思いました。タイツもグラデーションや情報量が多くてありがたいです。

高山 立体にしたとき、イラストの色味のままだとベタ塗りのような印象になってしまう。立体感を演出するためには、ハイライトとベースとシャドウを取り入れていく必要があるんです。それらを入れることでキュッと締まって見えたり、肉感を感じさせることで、完成度がより増していくんです。

——すごくセンスが問われる作業ですね。

高山 リュックひとつとっても、シャドウを的確に入れることで立体感やスケール感がさらに増します。そういった目の錯覚を利用する必要もあるので、難しい工程ですけど、上手くハマると今回のような素晴らしいデコレーションマスターが完成するんです。

 

——ムタさんから、彩色について依頼したところはあるんですか?

ムタ タイツがのっぺりとしないように肌が感じられるが透けすぎないようにしてほしいということや、制服の袖周りの色味が白、赤、紺と寒色と暖色とがぶつかりあっていて合わせにくいんですけれど、見たときに目に痛くならないよう馴染むように調整してくださいとお願いしました。

——造形作業をされているときに彩色のことまでイメージされているんですか?

ムタ そこまで考えられると良いのですが、今回最初に上がってきたのが線画だったので、まずは造形に集中しました。その後、完成イラストを見て、量産の際に影響が出ないような形状に調整をしました。例えば、シワの深さについてであれば、深すぎると塗装するときに色が入らないこともありますので。

高山 商業フィギュアは金型を基に大量に量産するので、型として抜ける抜けないの制約が多いんです。そこの計算もしながら造形出来るのが商業としての本当のプロと言えます。今回、夢芽のフィギュア化においては随所にプロ意識を感じさせる、そんな攻めた造形を施しています。

——本当にクオリティの高い作品になっていると思います。ちなみに、作品を見たファンの方からの反響はありましたか?

ムタ SNSを見ていたら、展示会の写真と共に「かわいい!」とコメントしている方が多くて安心しました(笑)。この前のイベント(『SSSS.GRIDMAN 03 REVENGE』と『WONDERFUL HOBBY LIFE FOR YOU!! 33』)でも夢芽のフィギュアの展示がされていたのですが、コロナ禍で会場に足を運びづらかったので、ネット上でそのような意見を見ることができて本当に励みになります。

——その流れでお聞きしたいのですが、原型師としてやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

ムタ 原型が出来たときはもちろん、彩色まで完成したデコマスを見たときです。“こんなふうに仕上がったんだ、ありがたい!”って。あとは、発売されてユーザーさんの元に届いて、リアクションがあったときですね。

——なるほど。ちなみに今後ポニーキャニオン関連の作品で造形を手掛けてみたいものはありますか?

ムタ 個人的には、『SHOW BY ROCK!!』です。特にレトリーが大好きなので、いつか機会があったらお願いします(笑)。

——では、最後に今後ファット・カンパニーとして、フィギュア市場で挑戦してみたい、展開したいことなどはありますか。

高山 昨今目立つ動きとして、数年前よりフィギュアメーカーが乱立している状況がある中、注目すべきポイントは、版元様が直接フィギュアを作るようになったのは記憶に新しいです。コンテンツホルダーが作るとなると、作中一番人気のキャラクターを最初にリリースした後に、僕らみたいないわゆるライセンスメーカーが出せるようになる、といった構図になります。

——原作を持っているとそうなりますよね。

高山 そういった状況下でどういった立ち回りが出来るのか、というところでライセンスアウトの商品はもちろんのこと、オリジナルブランドをより確立させる、という部分にも注力しています。例えば、当社グループ会社のグッドスマイルカンパニーの『ねんどろいど』や、マックスファクトリーの『figma』といったような魅力的な独自ブランドを展開し、より版権を得られやすい状況を作りつつもオリジナル商品の開発も強化していく。当社には独自ブランドとして展開している商品『パルドルとパルフォム』があります。今後更にシリーズ含め強化していく予定ですので、今後の展開に是非ご期待ください!!

 

【商品情報】

商品名:南 夢芽(みなみゆめ)

作品名:『SSSS.DYNAZENON』

メーカー:Phat!

カテゴリー:1/6スケールフィギュア

価格:¥19,980(税込)

発売時期:2022年4月発売予定

受注期間:(日本時間)

2021年5月14日(金) 22:30から2021年7月14日(水) 23:59

仕様:ABS&PVC 製塗装済み完成品・1/6スケール・専用台座付属・全高約160mm

原型制作:ムタ(Phat!)

彩色:緋色(scarlet)

発売元:ポニーキャニオン

※商品の発売、仕様につきましては、諸般の事情により変更・延期・中止になる場合が御座います。

 

■予約サイト:

きゃにめ特設サイト

https://special.canime.jp/dynazenon_minamiyume/

グッドスマイルカンパニーオンラインショップ

https://goodsmileshop.com/ja/p/PCN_JP_00001

PONYCANYON SHOP(海外)

https://shop.ponycan.com/products/detail/1535

GOOD SMILE天猫旗艦店(中国)

https://detail.tmall.com/item.htm?spm=a212k0.12153887.0.0.4d7c687dFBGgnS&id=643437296762

 

『SSSS.DYNAZENON』公式サイト:https://dynazenon.net/

 

©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会

 

【ファット・カンパニーについて】

フィギュアやグッズを中心に、ありとあらゆる作品及びオリジナル商品の企画、制作、製造、販売・輸出入を行う総合ホビーメーカーです。

 

ファット・カンパニー 公式サイト:http://phatcompany.jp

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